勤続期間保証基金問題に解決の糸口

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

2つのインフレ抑制経済計画(1998年の夏期計画と1990年のコロール計画)で基金の利息修正を停止したためそれにより、労働者が破った損失の保証問題が近年最大の課題であったが(本誌2001年5月号参照)、3月21日、政府とCUTを除く労働組合団体の間で一応の合意が成立したと大統領が発表した。

その内容は、次の通りである。

  1. 補償の金額は、FGTS(勤続期間保証基金)の個人口座に払い込む。これを引き出すためには、本来の条件、たとえば正当な理由のない解雇、不動産の購入、癌・エイズなどの難病の治療に限る。既に年金受領者となっている者、上記計画の実施当時に解雇された者は即時に引き出す事がきる。
  2. 権利者の基金への補償金の払い込みの時期と割合。
    • 1000レアルまで:全額を2002年7月まで
    • 1001から2000レアルまで:10%引きで2002年の7月から2003年6月まで
    • 2001から5000レアルまで:12%引きで2003年から2004年12月まで
    • 5000レアルを超えるもの:15%引きで2003年7月から2006年7月まで7半期にわたる分割払い
  3. 資金負担者
    • 政府:60億レアル
    • 企業: 賃金表に対するFGTS負担金率を従来の8%から8.5%とする。労働解約の罰金(解雇手当)を向こう12年間40%から50%に引き上げる。
    • 労働者:受領すべき残高の10%から15%の差引。
  4. 計算方法
    • 2001年3月10日までの残高修正法
    • 1989年1月夏期計画のみに存在した口座
    • A-1988年12月1日の存在した残高を1000で除し、B-その商い1.22レアルを乗じる。
    • 1989年1月(夏期計画)と1999年4月(コロール計画)の両方に存在した口座。
    • A-1988年12月1日の残高を1000で除し、その商に1.22レアルを乗じる。
    • B-1990年4月2日の残高を1000で除し、その商に18.98レアルを乗じる。
    • C-AとBを加える。
    • 1990年4月(コロール計画)のみに存在した口座
    • A-1990年4月2日の残高を1000で除し、B-商に18.98レアルを乗じる。

つまり、政府案はいわゆる大岡裁きに似た「三方一両損」である。これに対して、労動組合の中央団体のうちFS組合の力、CGT(労働総同盟)の2労組はこの案を受け入れたが、最左翼であるCUT(中央統一労組)は拒否した。

しかし、フェルナンド・カルドーゾ大統領は、上記のインフレ抑制計画はいずれも現政権の行ったものでないことを強調。「この解決案の諾否は最終的には労働者個人の問題であり、欲するならば訴訟に訴えよ」と開き直った感じである。

なお、経営者団体であるCNI(全国工業総連盟)は、この案を「ブラジルコスト」の一つとしてとらえて拒否し、その傘下で最大の経営者団体であるFIESP(サンパウロ工業連盟)は法廷および国会に訴えていくと主張している。

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