失業の増加なしに生産性が向上
―2000年の工業部門

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

ブラジル地理統計資料院工業局の発表によると、2000年の国内工業労働者の平均労働生産性は5.8%上昇した。過去5年間の平均上昇率8.5%に比べると低下したものの、その中身はこれまでとはっきり異なっている。つまり、過去10年間続いた工業部門の雇用減少が中断し、逆に2000年には0.6%の雇用増加という非常に重要な転換を見せた中での生産性向上であったということである。政府、民間ともにこの点を高く評価している。

90年には生産性、雇用ともi羊低下したものが、91年から雇用減少はそのままだが生産性は上昇に移った。

生産性の向上は生産性の限度を越える消費に対応できる余力が増加したことを意味する。しかし生産拡大投資が遅れているために、現在のように経済成長率が高まってくると、消費を賄える生産を達成できるかどうか疑問が持たれ、.インフレ圧力を誘引しないかと心配がされている。同資料院の分析では、過去の生産性向上がなかったならばブラジルの工業生産は現在の需要を賄えない限度に達していたであろう、としている。

ただ90年代のブラジルの非常に高い生産性向上は、主に雇用を減少させることによって労働者1人当たりの生産割合を上昇させて達成している。それは企業が90年代初期の経済開放に驚いて、少ない労働力で高い生産性を達成できる機械設備の更新に急きょ投資を増やして生産増加を図ったことを表すことでもあり、これによって工業は、過去の低い生産性と比較して一時的に非常に高い成長水準を達成した。

これが2000年には、生産性を向上させながら雇用も増加させており、同資料院では長期にわたる成長を支える基礎作りが出来つつあると見ている。

しかしブラジルの生産性と雇用に対する民間の分析には二つの流れがあって、一次のようにに説明されている。

一つは、生産部門全体にミクロ電子製品の使用が普及して生産効率を高める手段となる代わりに、経済構成に変化が生じ、雇用にマイナス影響を与えることは避けられない。しかもそれは短期、中期のみに留まらず、半永久的に雇用を減少させる原因になると悲観的に見る意見である。

この情勢になると、雇用の増加はサービス部門のみに限定され、質の悪い職場が増加し、高失業が慢性化すると見ている。

第二の意見は、すべての近代化投資と経済開放インパクトにより、短期的に雇用がかなり増加し、中長期的に見ても増加速度が低下する程度だとする楽観論である。

近代化投資と開放は一時的に調整期間を要するが、これを通過すると生産部門の経済的な新技術によって、永続的経済成長に入り、質の高い職場が生まれると期待している。

同資料院の研究者たちは、政府機関としての資料院の立場と、経済の長期安定成長を予測している立場を考慮して、後者の楽観的予想の方が実現可能性は高いとしている。

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