大統領の上下両院合同会議演説

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

アメリカの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年6月

ブッシュ大統領は2001年2月27日、上下両院合同会議演説を行い、新政権の施政方針を明らかにした。国防の強化、教員の養成と採用に費やす予算増額を始めとする教育問題への積極的な取り組み、大規模減税のほか、労働・社会保障問題について次のように述べた。

  1. 65歳以上の高齢者と障害者を対象にした連邦政府の公的医療保険制度であるメディケア予算を今後10年間で倍増し、来年度だけで2380億ドル(1ドル=120.55円)を費やすことにより、現在のプログラムを維持するほか、低所得高齢者向けの処方箋薬薬剤費給付を開始できることとする。医療保険に加入していない多くの労働者に対し、還付可能な税控除を設け、自分自身で医療保険に加入する手助けをする。さらに、低所得者が多く居住する地域のコミュニティ医療センターで医療サービスを受ける受診者数を向こう5年間で倍増させる。
  2. 医療保険に加入していても、保険会社が、保険給付の対象となる治療法を限定しているため、患者が、保険会社から医療費の給付を受けることができるか心配しなければならないという問題が指摘されている。議会と大統領は、患者の権利章典を制定して、患者が受けるべき治療の内容を医師が決定し、適切な医療サービスが確実に提供されるようにする。
  3. 難病克服のため、医学研究予算を増額する。議会に対しては、国立衛生研究所(NIH)の予算倍増を提唱、また、社会保障年金(公的年金)基金の黒字を他のプログラムのために用いず、社会保障制度のためだけに用いる。7年後には、ベビー・ブーム世代が社会保障給付を受給し始める。国会議員の誰もが認識しているように、社会保障制度の改革をしなければ、社会保障税の大幅引き上げか給付の大幅引き下げは必至である。2001年春に大統領直轄の委員会を設け、社会保障制度改革に向けた提言を準備させる。個人貯蓄勘定を希望する若者には、社会保障年金がこれを提供すべきである。
  4. 現在の5段階の所得税率(最低税率は現在15%、最高税率は39.6%)を10%、15%、25%、33%の4段階に減らす。子ども1人あたりの扶養控除を1000ドルに倍増する。所得を2度課税するのは公正でないため、遺産税を廃止する。

2001年6月 アメリカの記事一覧

関連情報