依然として厳しい雇用状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

経営が悪化している企業が、生産量の削減と生産規模の縮小を計画し、労働者の削減による生産規模の縮小を打ち出した。

サンミゲルフード株式会社は、低価格の輸入鶏肉との競争と国内の消費の低迷により、マニラのカブヤオとラグナの鶏肉加工工場を閉鎖した。生産規模の縮小に伴う余剰人員対策として任意退職制度を提案し、対象労働者に総額2億700万ペソを超える任意退職制度基金を準備した。解雇対象の労働者に対しては、再就職情報提供の他に、独自の収入をもたらす起業セミナーも企画している。

FRセメント株式会社も、余剰労働者対策に任意退職制度を打ち出し、さらに独自の労働者援助計画を準備した。任意退職制度を申請した労働者は、2つの退職手当を受け取られる。一つは、勤続年数毎に2カ月分の給料をすべての年に支払うもので、これは、団体協約で取り決めた勤続年数毎に1.5カ月の手当を支払う一般退職手当より高い。もう一つは、定年前の未勤続年数に対し毎年1カ月の給料を支払うものである。加えて、この任意退職制度は、申請者とその家族に対し2年間の医療保障も提供している。制度を利用した労働者には、職業訓練と再就職に関する職業紹介のサービスが提供される。起業する場合は、起業家訓練と1人当たり2万ペソの開業資金が提供される。

また、大企業に加え中小の企業が乱立し慢性的に製造過剰になっていた衣料品製造業では、経済のグローバリゼーション化に備えた衣料品・繊維輸出委員会(GTEB)の新規則の施行により、広範囲な雇用環境の変化が予想されている。

衣料品産業の国際競争力を高めることを目指したGTEBの新規則により、政府が各企業の輸出割当てを決めた場合、従業員が平均200人前後の517社が割当てを受けられないと予想され、1万人を超える労働者が失業すると予想されている。また、業界関係者は、500社以上の衣料品製造会社が2001年中に閉鎖される予想している。

経済全体を見てみると、第4四半期のGDP成長率が、第3四半期より1.1%低下し0.2%の成長に落ち込み、特に不況の影響を受けた工業部門の成長率は、第3四半期の0.8%の上昇から第4四半期は、0.1%の微増に低下した。

このような経済状況の中、アロヨ政権は、国内市場の冷え込みにより縮小している国内経済基盤の改革と、グローバリゼーションによる輸出市場の国際競争の激化に対処する輸出産業の育成・強化という2つの政策を実行しなければならない。しかし、国内政治は、エストラーダ前政権の政治的混乱からは、まだ完全に回復していない。このため、アロヨ新政権は、政府への信用と政権崩壊によりもたらされた社会の再構築、混乱した経済の回復という重大な責務を負っている。今のところ、政権交代は、2000年10月より続いた政治的混乱により急降下した経済回復に効果をもたらしていない。

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