失業対策のため、急がれる民間企業の育成
バジパイ首相は、今後3年間に公共部門の総雇用人数を10%削減すると発表し、国民に公共部門への就職に対して過度の期待を抱かないよう要請した。バジパイ首相の政策の基本路線は小さな政府にあり、これを行政の範囲の縮小、歳入の縮小、財政赤字の解消により達成するよう計画している。
公共部門の各労働組合は、小さな政府への行政改革は中央政府と地方政府の重要課題であることには疑いがないが、政府の縮小だけがこの目的を達成する唯一の方法かどうか討議すべき必要があり、この方法を過度に強調すると雇用の維持にも影響が出ると危惧し、雇用率が低下すると労働者の収入状況、福利環境が悪化すると反発している。
このため、中央政府は、この政策を強化する前に雇用状況の変化を適切に把握する必要があると見られている。
1981年の公共部門で雇用されていた総労働者数は1548万人で、91年には1906万人に増加し、年平均増加率は2.1%である。改革が始まった1991年から98年を見てみると1906万人から1942万人に増加し、この8年間の年平均増加率は0.2%に低下した。
内訳を見てみると、中央政府の公務員数は、1981年は320万人(比率は20.6%)だったが、1991年には341万人(17.9%)、1998年には325万人(16.8%)となった。中央政府に関する限り、1981年から91年までは年2.3%の増加だったが、91年から98年にはマイナス0.6%となり、人員削減が実施されつつあることがわかる。
一方、州政府の公務員の比率は、1981年は568万人(36.7%)で、91年は711万人(37.3%)、98年は746万人(38.4%)に増加し、人員削減に成功していない。
公営企業の労働者数は、1981年の458万人(29.6%)から91年には622万人(32.7%)に増加した。行政改革が開始された後も、1998年には646万人(33.2%)に増加し、この8年間の年平均増加率は0.5%だった。
地方政府職員は、1981年には204万人(13.2%)が雇用され、91年には231万人(12.1%)に増加したが、98年には225万人(11.6%)に減少した。
全般的に改革開始後、公営企業以外の公共部門での雇用数は、微増または減少傾向にある。バジパイ首相は、政府の行政範囲をさらに縮小する計画を立てているため、近い将来公共部門での雇用数はさらに減少すると予想される。
労働組合のある公共部門と民間部門の雇用者数
年 | 公共部門 | 民間部門 | 合計 | 公共部門の比率 % | 民間部門の比率 % |
1990 | 187.72 | 75.82 | 263,54 | 71.2 | 28.8 |
1991 | 190.57 | 76.76 | 267.33 | 71.3 | 28.7 |
1992 | 192.10 | 78.46 | 270.56 | 71.0 | 29.0 |
1993 | 193.26 | 78.51 | 271.77 | 71.1 | 28.9 |
1994 | 194.45 | 79.30 | 273.75 | 71.0 | 29.0 |
1995 | 194.66 | 80.59 | 275.25 | 70.7 | 29.3 |
1996 | 195.29 | 85.12 | 279.45 | 69.5 | 30.5 |
1997 | 194.59 | 86.86 | 282.45 | 69.2 | 30.8 |
1998 | 194.18 | 87.48 | 281.66 | 68.9 | 31.1 |
- 注:単位10万人、3月31日現在
- 出所:インド中央政府発行『経済概況1999‐2000』
公共部門の労働者の転職先は、主に民間部門である。
1981年の労組のある民間部門の雇用者数は、1981年の740万人から91年には768万人に増加したが、年平均増加率は、0.4%にすぎなかった。しかし、改革開始後の民間部門は1998年に875万人に増加し、年平均増加率は1.7%を記録した。雇用の増加に最も貢献したのは、製造業で、続いて金融業、保険業、不動産業である。雇用の増加を公共と民間の労働者数の増減に照らして考察してみると、増加する労働者に雇用を提供するのは民間部門に移りつつあることは明らかである。
公共と民間部門での雇用の増加率は、公共部門での雇用数増加は年平均0.2%なのに対し、民間部門の増加は1.7%である。総合的な雇用増加率は、1991年から98年の8年間の年平均増加率は0.6%である。
明らかに、公共部門での雇用増加率の低下をある程度まで民間部門の雇用増加率の上昇により補っているが、まだ十分ではない。雇用成長率の0.6%は、労働力人口の増加率よりかなり低い。
GDPの成長率から見ると、経済改革が経済成長を刺激したのは疑いがない。1991年度から92年度の初期の段階では成長率は低かったが、徐々に民間部門の経済が発展し、92年度から97年度の第8次計画では、GDPの平均成長率は6.8%だった。
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