サンパウロ首都圏のスト激減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ブラジルの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年4月

公立財団サンパウロ州データー分析機構(SEADA)と労働組合連合統計社会経済調査局(DIESE)の合同調査によると、ブラジル国内最大最強の経済圏であるサンパウロ首都圏(サンパウロと衛星都市38市を含む地域とサントス地域(サンパウロの外港であるサントスを 中心の港湾地域)の2000年1年間のストライキ発生件数は84件であった。

これは前年1999年に比して10.6%減であり、1994年(現行通貨のレアールを中心としたレアール計画の開始年)の401件に比して79%減である。これに平行して、サンパウロ地区労働裁判所の取り扱った団体訴訟(賃金またはその他の労働条件の改定を目指して組 合または企業側が裁判所に提起する訴訟)も、前年比16.4%減の137件、1994年の367件に比して64%減となっている。

このストライキと団体争訟減少の原因は、何よりも景気の回復とこれに伴う雇用の増大であろう。ブラジル全国において新規雇用増は正規の登録を有する者のみでも約200万人にのぼり、サンパウロ首都圏のみでもその数は30万2000人に達する。

地区労働裁判所長官フランシスコ・アントニオ・デ・オリベイラは、労使がストライキ または裁判の手段に訴えることが少なくなったことを一応は歓迎しながらも、これには労働者の失業の恐怖と正式に登録されない労働者の増加が影響しているのではないかと分称している。

また、労働大臣フランシスコ・ドルネーリは昨年3月に制度化された企業内の調停委員会がストライキと訴訟減少の原因であると自画自賛している。同大臣によると、この制度が実施されてから訴訟に至らず解決された件数は20万件、解決に要した期間は20日、もしこれを裁判に訴えれば判決まで2年間は掛かると言う。

現在、全国に設置された企業内の調停委員会は490。サンパウロ州のみでも131で、2001年にはその数1000に達するであろうといわれる。もっとも、この制度の有効性は団体交渉よりも、むしろ個人と企業の紛争の解決にであろう。前述のオリベイラ長官は、2000年の個別労働紛争は32万1898件で、前年比8.5%減となっていると述べている。

しかし、「依然として労働争議における究極の解決手段はストライキである」と主張するのは労働組合団体唯一労働中枢(CUT)のジョン・フェリシオ会長である。彼は企業側がストライキより話し合いを望んでいることを認めながらも、ストライキの有効性を疑ってい ない。その証拠として、2000年11月に自動車組み立て工場を相手にCUTとその他の組合が行った10%賃上げを目的とするストライキを挙げる。企業側はストライキの違法を労働裁判所に提訴し第一審においては組合側が勝利、企業側は高等労働裁判所に上訴しているが、実際は敗北を認めて10%の賃上げを行い、スト中の賃金支払いも行っているという事実を指摘している。

しかしフェリシオ会長は、失業率が低く、インフレが高率であった80年代に比し、ストライキを行うことが困難になっていることは率直に認め、出来れば有利な条件で和解が出来るに越したことはないとしている。事実、2000年上半半期には、インフレ率を上回る賃金を要求した各種組合は70%がストライキに至らず要求を貫徹していると、フェリシオ会長は言っている。

2001年4月 ブラジルの記事一覧

関連情報