地方自治体労働者、工業部門労働者との待遇格差是正を要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

賃金統計年報の内容は、ブルーカラー労働者が十分な報酬を受けていないとする地方自治体労働者労働組合(SKAF)の要求を裏付けている。

国内の全労働者の平均賃金は1999年に月1万9400クローネで、男女の平均賃金はそれぞれ月2万1200クローネ、月1万7600クローネであった。実質賃金は1995年以来、平均20%上昇した。最も高い実質賃金上昇率を経験したのは、学歴が高く、個人ごとの賃金交渉で、ブルーカラー労働者よりも発言力のある中央政府のホワイトカラー労働者である。彼らが1992年以来、実質賃金を24%上昇させたのに対し、立ち後れが目立つのが、ブルーカラーの男性地方自治体現業熟練者(消防隊員、補助看護士、電気技師など)である。

SKAFは、工業部門での交渉が決着した後、本格的な賃金交渉を開始する。SKAFは、スウェーデン労働組合総同盟(LO)との共同要求において、LOの全加盟組合によって設定された賃金引き上げ方式を受け入れている。それは、月額最低700クローネとする、3.8%の賃金引き上げ要求であり、それは、工業部門より低い賃金を支払っている地方自治体にとっては、4.7%の賃金コスト上昇を意味する。しかし、それに加えて、SKAFは、熟練労働者グループに対し、さらに0.5%を加えた補償(これまでの待遇改善の立ち後れを取り戻す)ための引き上げを要求している。今回SKAFは、行政官、教員、看護士、医者などの、地方自治体部門のホワイトカラー労働組合と、要求並びに交渉を調整していない。それどころか、SKAFは、「熟練労働者集団は、地方自治体の中での所得の再分配を通して、実質賃金減を補償してもらわなければならない」と主張している。すなわち、ブルーカラー熟練労働者に対する追加の0.5%は、ホワイトカラーの専門職員、つまり医者、教員、看護士への給与を抑制すること、あるいは、これら専門職員の契約期間中の通常の賃金ドリフトを差し控えることによってまかなわれるべきだというのである。こうして団体交渉は、労働組合と地方自治体との間で行われるのと同程度に、地方自治体の異なる労働組合間の闘争となりつつある。

民間サービス部門同様、地方自治体と中央政府の全労働組合の目標は、工業部門労働者の賃金・給与である。地方自治体の熟練労働者は、工業部門の熟練者より低賃金であってはならないと感じ、非熟練公務員労働者は、少なくとも工業部門の労働者の賃上げと同じ賃上げにして当然だと感じている。それも率ではなく、金額においてである。同時に、彼らはすべて、賃金引き上げがインフレにつながってはならないことに合意している。全労働者は、実質賃金の減少につながった1980年代の2桁の賃上げを記憶しているからである。

過去に政府は、政府系の市場経済研究所を通して、7%以下の失業率はインフレ的であり、賃上げは欧州水準もしくはインフレ率が上昇しない水準以下にすべきであると主張していた。現在失業率は4%未満であり、ここ数年間、スウェーデンの賃金上昇は、中欧諸国より1.5%ほど高い水準にあった。それでもスウェーデンは、他のすべてのEU諸国よりインフレ率が低い。こうした状況において市場経済研究所は、現在、スウェーデン経済は、NAIRU(非インフレ加速失業率)―すなわち失業率、賃上げおよびインフレが、現在と全く同じ水準で均衡している状況―にあるとしている。この言明は、経済専門家の科学的水準を示すものかもしれないが、交渉当事者がまじめに受け取る助言ではもちろんない。

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