銀行従業員労組、スト決行

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

全国の9つの労働組合が、2000年12月22日、「銀行従業員労組連合フォーラム(UFBU)」と名づけた会議を開き1日ストを決行した。

労組の代表は、「銀行民営化反対スト」と命名されたこのストは、圧倒的反響があったと発表した。国有と民間、中央と地方を問わず、すべての銀行の行員が参加した。ストの影響により、多くの国有銀行は外国為替取引を停止し、現金自動支払機(ATMs)さえ作動しなかった。また、インド準備銀行(RBI)(インド中央銀行)の行員も参加し最小限の業務だけが行われた。

ストの直接の原因は、銀行の政府持株を削減する法案が、国会の関係委員会に提出されたことである。この2000年銀行・金融機関法改正法案は、民営化問題の調査のために委員会を設置することを明記しており、国有銀行の政府の持株比率を現在の51%から33%に削減するとしている。

UFBUの招集者、全インド銀行従業員連合(Aiboc) S.R.セングプタ代表は、1日ストを成功させた銀行従業員労組を祝福し、連邦政府が国有銀行の持株比率を低下させる政策についてさらに激しい闘争をする準備をするよう促し、銀行従業員のストを支援したRBIの行員をはじめ各組織に謝意を示した。

銀行業で最大の銀行従業員労組の全インド銀行従業員労組(AIBEA)委員長タラケスワル・チャクラボーチ書記長は、ストは完全に成功したと発表し、連邦政府が2000年銀行・金融機関法改正法案を撤回し、1兆ルピー(1ルピー=2.49円)を超す不良債権の処理に専念することを希望すると述べた。また、銀行を効率よく運営するために必要なことは、政治的干渉を受けずに、金融業を自由に専門的に行うことであると強調した。

インド銀行従業員労組(BEFI)サンチ・バードハン委員長は、銀行従業員に、UFBUが宣言する可能性がある無期限ストに対して準備するよう指令した。

一方、全インド準備銀行行員労組サミル・ゴッシュ委員長は、準備銀行行員は国有銀行の活動を支持することを声明の中で明らかにした。

今回銀行従業員労組がストを決行した理由には、任意退職制度(VRS)問題も絡んでいる。セングプタ代表は2000年10月、労組は、国有銀行の行員の大量の移動をもたらすVRSを支持したくないが、有能な管理職の行員が民間に転職することが十分に予想され、他方財政難の国有銀行は報酬が十分支払われず、このため有能な人材を引き止めるのは困難であると述べている。このような事情で、各労組は、この問題については戦闘的行動は取っておらず、各銀行従業員労組はこの問題を組合活動から切り離して考え始めているのが現状である。また、代表的な中央労組、インド労働組合センター(CITU)、全インド労働組合会議(AITUC)、インド全国労働組合会議(INTUC)は、行員のVRSの選択に関し、1990年代国営紡績会社(NTC)等の製造業の労組でも組合員がVRSを選択するのを引き止めることができなかった経験から、行員の選択に関して指示を出していない。

UFBUの労組幹部は、労働者がVRSを選択するのを誰も止めることはできないと説明している。銀行従業員労組は、行員にVRSを受け入れないよう説得するキャンペーンを行ったが、結局多くの行員がVRSを申請したと語った。

こうした中、経営者側は、早期の人員削減を目的にVRSを打ち出した。国有銀行のユナイテッド・コマーシャル銀行(UCO)は、2001年1月から3月まで、VRS計画を導入する。3万1000人の行員のうち5000人が申請すると予想し、42億5000万ルピーの費用を見積もった。このためUCO銀行は、経営再建資金として中央政府に25億ルピーの財政支援を要請している。同じく国有銀行のユナイテッド・インド銀行(UBI)は、2001年1月、2万1000人の行員のうち、10%から12%が申請することを希望し、費用は20億ルピーを見積もっている。UBIのビスワジット・チョウドリ頭取は、政府にVRS資金の金利の一部負担と、経営再資金として30億ルピーを要請している。

このような経営者側のVRS発表により、銀行従業員労組は、行員のVRS選択により組合員が急激に減少することを危惧し、銀行従業員組合活動を立て直す上でも、国有銀行に民営化反対に向けて組合員の団結を促す必要があったと見られている。

また、BEFIのある労組幹部は、行員のVRS選択に関しても全く傍観しているのではなく、VRS取得者の主な不満である退職後の社会的地位の欠如、転職の困難さを強調し、VRS選択後の収入を良く調査すべきだと組合員に警告している。

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