ブルーカラー労組調査、90年代の所得格差拡大を指摘

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

政府統計局であるスウェーデン統計局の統計資料に基づき、ブルーカラー組合であるスウェーデン労働組合総連合(LO)がまとめた報告によると、所得格差は1990年代に拡大した。

  • 子供を持つ家庭、特に片親家庭(主に母子家庭)が取り残される一方、子供のいない世帯の経済状況は大きな改善を見た。
  • ブルーカラー労働者で子供を持つ世帯は、可処分所得を4.2%増加させたが、子供のいない世帯の所得増(%)は、その約2倍であった。
  • ホワイトカラー専門職の世帯は、所得を11.1%増加させた。子供のいない世帯の所得増は19.3%である。
  • 子供を持つ片親(大部分は母親)の所得は4.9%減少した。

所得格差に関する報告は、政府に対する労働組合の陳情およびこれから始まる賃金交渉での重要な論拠となる。LOは、賃金交渉で最も所得が低い人のための追加的報酬を要求している。

LOの新しい女性委員長であるワンヤ・ルンドビ-ウェディン氏は、所得格差拡大の主要な理由を3つ挙げている。

  • 賃金格差が増した。
  • すでに高所得である労働者グループの資本所得が増加した。
  • 福祉制度は、子供を持つ家計の経済水準を引き上げていない。

LO傘下の諸組合は、月1万6000クローネ(1クローネ=12.32円)を下回る賃金しか得ていない労働者対象の追加的引き上げを要求することにより、継続中の賃金交渉で賃金格差を縮小するよう、懸命に努力するだろう。しかし、LOは、多数の片親(母親)が公共 サービスでフルタイムの職を見つけることができず、パートタイムの職から抜けられない という点については、なかなか力になることはできない。

新しい年金制度および労使交渉で定める付加的年金によって、全労働者がちょっとした財産家になりつつあり、彼らは、相当な個人貯蓄を持つことになるだろう。ただ、これは、 高所得者層は、より多くの貯蓄を持つという事実を変えるものではない。

LOは、(低所得者層に恩恵をもたらす)児童手当の相当な引き上げ、育児休暇保険の拡 張、市町村の育児センターでの保育料金の上限の設定を要求している。LOは、パートタイ ム職をフルタイム職に継続的に変更するよう、成功裡に地方政府を説得した。未解決の問題は、低所得家庭に対する、家賃統制などの住居費の軽減である。現在、片親がパートタ イムからフルタイムに勤務時間を増やした場合に、住居手当は削減されることが多く、総所得の増加がゼロ、あるいは増加してもごくわずかという状況になっている。

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