三協精機、スービック湾経済特別区に工場建設

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

三協精機製作所は、2000年11月27日、スービック湾自由港区(SBF)にあるテクノパーク工業団地に新たに設立した「三協精機フィリピンズ・マニュファクチャリング・コー ポ」の起工式を行った。三協精機製作所は、26年前にマレーシアに進出して以来、台湾、韓国、シンガポール、米国に生産工場を建設してきたが、今回初めてフィリピン工場を建設する。

三協精機製作所は、1998年から2000年の間に60億円を投資し、6万6000m2の土地に3万6000m2の工場を建設する。工場は2001年10月完成予定で、フィリピン人労働者は2003年3月末までに約1000人、最終的には3500人を雇用する予定である。新会社の資本金は4億ペソ(1ペソ2.48円)である(増資検討中)。新工場では、ハードディスク駆動装置(HDD)用の動圧軸受駆動モーターを中心に生産する予定で、生産台数は当初月産100万個、その後需給環境を考慮しながら当面240万個にまで増産する予定である。

会社側の説明によると、今回SBFに工場を建設した理由は、大きく3つある。1つは、労働者の採用環境である。スービック湾開発庁(SBMA)が、労働者の採

用について全面的に支援し、会社の要望にあった人材を確保できる見とおしが立っている。採用の多くは、ここを通じて行われる予定である。この方法により、できるかぎり労使協調路線を目指したいとしている。2つ目はインフラ環境である。米軍が残した港湾施設、空航施設があり、海と空のインフラが整備されている。さらにSBMAは、JICAにコンテナヤード整備計画のマスタープランの依頼をしており、さらなるインフラの整備が期待される。高速道路もマ ニラ市からクラーク市まで建設されているが、これをSBFまで延長しようという計画が現在進められており、この資金に小渕ファンドが投入される可能性が高いと予想している。3つ目は地理的条件である。日本のコンピューター・メーカーのうち、富士通、東芝、日立のコンピューター工場がフィリピンにあり、距離的に販売が容易である。また、東南アジアと東アジア全体からフィリピンを見てみると、フィリピンはこの地域の中心に位置し、今後エンジニア的業務を展開した場合、この2つの地域の国々をサポートしやすい。

労働者の教育・訓練については、技術者養成を重要視し、1000人当たり最低50人を養成する。2001年から2003年中に、技術者を約50人養成する見込みである。第1回目として10人に財団法人海外技術者研修協会(AOTS)にて研修を受けさせ、その後、1年間、日本の工場で、総合生産技術、品質管理、加工技術、組立技術の研修を受けさせる。残りの950人の5%は、総務、人事、生産管理、販売管理、経理従事者として、90%を生産従事者として現地で研修を行う。会社側は、将来的には工場長、技術部長、管理部長にフィリピン人労働者登用も考えており、現地社会との共存共栄を図っている。

会社側は、このような条件により、今後他のHDD用の動圧軸受駆動モーター・メーカーと対抗できるよう目指している。

政治が混乱している中で、外国企業による大型工場の設立にフィリピン側の期待も大きく、SBMAのフェリシト・パユモ長官は起工式で、スービックは、国内に蔓延している政治的、経済的混乱により軽視されており、政治的混迷にもかかわらず、SBFの経済環境は安定している、と強調した。

なお、SBFは、1992年フィリピン共和国法第7227号により設立が承認され、ここで生産された工業製品の他国への輸出、あるいは他の経済特別区への販売に対し非関税扱いが認められている。この法により、SBMAが設立され、進出企業に対し管理とサービス提供を行 っている。

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