厳しい外国人への就労許可・不法就労が増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

国内に失業者が増加するにしたがい、外国人の就労許可申請に対し、非常に厳しい審査が行われるようになった。外資系企業では、役員や技術者の交替時期がきても、後任の一時滞在就労許可がおりず、交替も困難になったと訴えている。外資系企業は、技術革新や経営のグローバル化に対応するには定期的な人員交替が不可欠と主張している。ブラジル労働省は、外資系の技術者はブラジル人に技術を伝授するために必要であり、ブラジル人と同一労働を行うのなら入国する必要はない、外資系企業の経営者も、ブラジル人で十分間に合うという考え方をとっている。

外資系企業は、必ず本国からの派遣社員を擁しており、彼らはブラジル人と同じ職種に従事しても給料が高い。このことも労働省は問題視しており、外国の本社から派遣される人員に対する就労許可を厳重審査する理由の1つになっている。

1998年以来公社の民営化が加速されて、外資系企業が大量に投資を開始しており、公社時代の旧組織の改革や従業員の教育訓練、設備の更新などに本社から専門家を派遣する必要性が増しているが、労働省は、「この大量失業時代に大量の外国人が、高い給料をとるためにブラジルに押し寄せている」とする世論に応じて、派遣社員の受け入れに厳しくなった。

大衆紙は、正式の就労許可が得られない外国人が大量に一時滞在ビザや観光ビザで入国して、自分の国から進出している企業に不法就労していると報じている。外国人の出入国を管理している連邦警察、外務省ともに不法就労の実態は把握していない。このためブラジル弁護士協会、医学地域審議会、サンパウロ技術者地域審議会の3組織が、外国人不法就労阻止行動を開始した。外資系企業の進出とともに、その企業のために外国人が入国し、専門職の就労に必要な組織に登録することなく就労しているとして、これら団体は、不法就労摘発の必要性を訴えている。企業と関係なく不法就労している専門職は、ラテンアメリカ諸国からの不法入国者が多い。

本社からの派遣社員を導入する企業は、経営や生産に必要な技能を有する訓練された人材がブラジルに不足していることを理由に挙げるが、ブラジル側は現地で調達できると主張して同意しない。1998年からの電話公社民営化に際し、サンパウロ州電話公社を買収して史上最大の投資と言われたスペインのテレフォニカ社は、時代遅れの電話設備を更新するため、やむなく本社から技術者を動員して更新を急いだところ、本社から一大職員グループを連れてきたと告発された。政治的、社会的摩擦を回避するために派遣技術者の人数を減らしたが、代わりに近代化計画の推進は遅れることになった。

新技術を導入するには本社の先端技術者を必要とするが、現地の労組や技術者団体の抵抗が強く、近代化要求と現地の要請との調和を取る必要が生じる。早くから進出した企業では、対立を避けようと派遣社員を減少させてブラジル人を本社で訓練する方法をとっている。一流企業の場合、本社で訓練したあと従業員が現地の会社に戻ってくる可能性は大きいが、一般の企業では、会社が経費を負担して訓練しても、訓練終了後は相応の給料に引き上げたいと他社に自分を高く売り込む習慣があり、訓練は必ずしも従業員に対する投資とはならない。

正式にブラジルで就労しようとすれば、ブラジルの在外総領事館、あるいは大使館を通じて、ブラジル政府労働省に就労許可申請を提出する。企業の派遣であれば従事する職種の専門家協会に登録された証明を要し、会社役員は役員証明を要する。就労許可は30日以内に発給される規定になっているが、実際には、行政指導によって、企業の役員でも就労許可の取得は困難になっている。

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