広告業界に対する映画俳優組合の半年間のスト終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

映画俳優組合(SAG)と米国テレビ・ラジオ芸術家連盟(AFTRA)に属する13万5000人の俳優は、宣伝に出演する際の報酬のあり方をめぐり、広告業協会(ANAおよびAAAA)に対して2000年5月1日よりストにはいっていたが、2000年10月22日に労使の暫定協約合意が公表され、176日間の長期ストが終結した。ハリウッドで大規模なストが起きたのは、12年ぶりである。このストのために、ロサンゼルス近郊の宣伝収録は、1年前の3分の1程度まで落ち込んだ。ストを行ったのは、主に年5000ドルから1万ドルの収入のパートタイムの俳優であるが、著名な俳優もストに協力し、10月10日には、スト期間中に多くの非組合員を宣伝に起用したプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社製品ボイコットの準備に女優のスーザン・サランドン氏が協力した。

ネットワーク・テレビの場合、俳優は1日で478ドルの出演料を得るほか、コマーシャル放映回数に応じた収入を得ていた。しかし、ケーブル・テレビの場合には、コマーシャルが13週間に何度放映されても、俳優は1000ドルまたはそれ以下の収入しか得ていない。現在、全テレビ・コマーシャルの3分の2が、ケーブル・テレビで放映されており、宣伝に出演する俳優が好景気の恩恵を受けていないと感じる一因となっている。そこで労組は当初、ケーブル・テレビで宣伝が流れる度に俳優への支払いが増すような報酬方式を要求していた。結局、労組は暫定合意で、ケーブル・テレビの宣伝について放送された回数にかかわらず定額報酬を得ることに同意した。その代わりに、定額報酬の水準が引き上げられ、最高額を2460ドルとされた。一方、広告業界は、インターネット専用の広告に、SAGあるいはAFTRAの労働組合員のみを用いることを約束した。このように労使が互いに譲歩し、双方とも3年協約の合意内容に一定の評価をしている。

ただし将来に残された課題もある。例えば、インターネット広告への出演について、報酬などを定めず、個別交渉で労働条件を定めることとしたことである。現在、俳優が出演しているインターネット専用の広告はなく、横断幕のような広告がインターネット上に流れている。

SAGとAFTRAに属する映画およびテレビ俳優の協約は、2001年6月30日に期限終了を迎える。今回、主に収入の低いパートタイムの俳優が広告業界に対して行ったストは、2001年6月30日までに協約を締結できない場合に映画俳優やテレビ俳優が予定しているストの前哨戦とみなされている。これらの俳優は、1万1000人を擁する映画脚本家が2001年5月1日に予定するストに合流する可能性もある。

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