大蔵省、政府系銀行自主退職制度の財源に世銀融資を模索

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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大蔵省は、政府系銀行の自主退職制度(VRS)の財源に、世界銀行からの融資の可能性を模索している。

2000年5月、大蔵省は、内部調査により政府系銀行全体でVRSに関する費用を約650から1000億ルピー(1ルピー=2.33円)と見積もったことを明らかにした。大蔵省は、40歳をVRSの適用年齢にすれば必要費用は約995億ルピー、今後3年間で18%の人員削減になり、適用年齢を45歳にすれば必要経費は639億ルピー、人員削減効果は今後3年間で10%になると説明した。

大蔵省は、2000年5月、適用年齢別に2つのVRS選択制度を政府系銀行に提案した。内容は、適用年齢を40歳とした場合、既勤続年数1年につき30日分の賃金と未勤続年数1年につき60日分の賃金を支払うこととするもの。適用年齢を45歳とした場合、既勤続年数1年につき45日分の賃金、未勤続年数1年につき45日分の賃金を支払う。どちらのVRSモデルも58歳以下の行員が利用できるとし、銀行は独自にこの2つから1つを選択する。

インド銀行協会の会員で構成された7人の委員からなるベルマ委員会が、この2つのモデル作成の準備作業を行ったが、発表後この2つの選択制度の規定の微調整を行い、銀行のVRS実施のための資金要求を支援していた。また、VRSの資金捻出のための借款計画についても審議している。

2000年7月、経営が悪化している3銀行(ユナイテッド・インド(UBI)、ユナイテッド・コマーシャル(UCO)、インディアン銀行)のVRS資金問題が表面化した。中央政府は、増額が予想される借款の金利コストの圧縮を考える必要に迫られた。ただし、中央政府は、VRS自体の資金は提供しないと発表した。

経営状態の良好な銀行は、VRSの資金繰りを独自に解決できるが、3行は、VRSの資金準備が困難になると予想された。3行の選択の余地は限られ、債券を発行した場合、政府保証があれば、債券市場で受け入れられるとみられた。また、市場から資金を集める代わりに、中央政府が利息を負担するという条件で、預金を利用することも討議された。しかし、銀行の預金者は、預金を生産的な目的のためでなく、VRSに使用されるのを歓迎しないことが予想された。

さらに、3銀行の再建にはVRSによる人員削減だけでなく、支店の削減も必要とみられた。大幅な人員削減は、支店運営を不可能にするからである。支店の閉鎖問題については、3銀行に対して大蔵大臣と準備銀行の支援が必要である。一般に、銀行が支店を閉鎖しようとしている地域の州政府は、その問題を中央政府に持ちこみ、閉鎖決定を変更するよう圧力をかけるからである。

2000年8月、全インド銀行従業員労働組合(AIBEA)等は、政府のVRSを「誘惑的な削減」と表現し、VRSによる行員削減は、世界銀行や IMF のような国際的融資機関によって計画され、これらの機関の意見のみ反映していると批判した。

2000年9月、大蔵省は、VRSの財源に、世界銀行から融資の可能性を模索していることを明らかにし、大蔵省銀行局は、この借款計画の実現を目指して世界銀行の経済部と協議を始めた。

VRSの資金調達は、この計画の実施において最も困難な問題の1つであり、今後銀行の不良債権問題を憂慮しVRSの申請を行う行員が増加することも予想される。そのような事態に対処するために、銀行は、VRSに関する支払いを可能にする体制を整備する必要に迫られている。

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