大統領、地域賃金生産性委員会に最低賃金引き上げを命令

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

エストラーダ大統領が、各地域賃金生産性委員会に賃上げを命令し、マニラ首都圏では、26.5ペソ(1ペソ=2.19円)の賃上げが決定された。

2000年9月27日、エストラーダ大統領は、原油価格の連続的な上昇に伴う物価の連鎖的な値上がりにより、実質賃金が目減りしていることを考慮し、マニラ首都圏の地域賃金生産性委員会(RWPB)に対し、2000年10月6日以前に、賃上げを提案するよう命令した。エストラーダ大統領は、他のすべての地域のRWPBも2000年10月13日以前に決定するよう命令し、「賃金の再評価と賃金の調整に対する多くの労働者の要求」に対し行動を開始したと発表した。

アントニオ・セバ報道次官は、大統領の行為を「正しい道へのステップ」と表現し、大統領の指令は、基本的には現状に対処したもので、RWPBが賃金を再編するのに期限と予定表を与えたと説明した。セバ報道次官は、この命令は原油価格の上昇、ペソの下落、予想される電気料金の値上げによってもたらされる問題に政府が本格的に対処し始めたものであると強調し、10月始めには、首都マニラや他の地域で、賃金がどの程度上昇するか知りうると記者団に明らかにした。セバ報道次官は、地域賃金生産性委員会が労使双方が受諾できる現実的な数値を提案するであろうと語った。

セバ報道次官は、大統領が、地域賃金生産性委員会のような本来独立した組織に命令を与えることが適切かどうか尋ねられて、エストラーダ大統領の命令は、絶対的な「期限」ではなく、賃上げ申請に対するヒアリングのスピードアップを委員会に喚起したものだとかわした。

労働者連帯運動(LSM)は、地域賃金生産性委員会に75.5ペソの賃上げを要求し、5月1日運動(KMU)は、175ペソの賃上げを要求した。一方、使用者側は、現行の最低賃金223.5ペソの6%の14ペソの賃上げを提案していると関係者は明らかにした。

このような状況の中、2000年10月6日、首都マニラのRWPBが、2000年11月1日より最低賃金を26.5ペソ上げ、250ペソにすると発表した。ラグエスマ労働大臣は、最低賃金の引き上げは、首都圏の350万人の労働者のうちの最低賃金受給者70万人に影響を与えると強調した。

これに対し、フィリピン労働組合会議(TUCP)は、26.5ペソの賃上げは、労働者にとって受け入れられるものではないと批判した。KMUのベルトラン議長も、賃上げ額は、労働者の福祉に好影響を与えるにはあまりに少ないと述べた。賃上げ額は、LSMの75.5ペソの賃上げ要求よりかなり下回った。TUCP、KMU等の労働組合は、最低賃金のさらなる引き上げと地域賃金生産性委員会の廃止を求めて抗議行動を起こすことを宣言した。

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