パートタイム雇用と期限付き雇用、修正法案を閣議決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

産業構造の変革に伴い、非典型雇用の拡大等、雇用形態の変化がドイツでも問題になっており、連邦統計局によると、ドイツ全土のパートタイム雇用者は1999年は630万人、その就業者数に対する割合は19.5%であるが、そのパートタイム雇用と期限付き雇用につき2000年9月27日、リースター労相提出の修正法案が閣議決定された。この修正法案はこの2つの雇用形態につき、従来よりも使用者側に制限を課するものであるが、その主な内容は以下のとおりである。

パートタイム雇用については、新たな請求権が規定され、フルタイム雇用者は事業所における在職期間が6カ月になると、3カ月の事前の予告をもって、パートタイム雇用に移行する請求権を付与される(ただし、従業員15人以下の事業所では、請求権は付与されない)。使用者は、「差し迫った事業所の正当事由」があるときにかぎり、この請求を拒否できる。また、雇用者がパートタイム雇用に移行した後で、フルタイム雇用に戻ることを容易にするために、使用者は、新たに設けるフルタイム雇用の枠に労働者を雇用するときは、パートタイム雇用者を優先させることを義務づけられる。さらに、使用者は、パートタイム雇用者に対して、フルタイム雇用者と同等の職業訓練並びに継続訓練の機会を与えることを、義務づけられる。

このパートタイム雇用の修正につき、労働省は、個々の雇用者の労働時間を短縮して雇用を創出することを、立法趣旨に挙げている。また、リースター労相は、修正案によって、パートタイム雇用についてのEU指針をドイツ法に取り入れ、男女の機会均等も促進され、家庭と仕事の両立の問題も改善されることになるとしている。

期限付き雇用については、1985年以来認められており、2年の範囲内で正当事由なく契約を締結でき、この期間の範囲で3回まで更新できることは従来と同じであるが、正当事由なくして期限付き雇用契約を締結できるのは、新規採用時に限られる。これにより、現行法における期限付き雇用の任意の継続が、制限を受けることになる。また、従来と異なり、労使の労働協約で、正当事由があるときにのみ期限付き雇用をなしうると規定することもでき、さらに、2年を超える期限をもつすべての労働契約については、正当事由を要求される。

期限付き雇用自体を認めることにつき、労働省は、この導入は過去においてこの雇用形態の過剰をもたらさなかったし、雇用に期限を付すことは、中小企業にとって、仕事の注文が不安定で市場の条件が流動的な場合に対処することを可能にし、また、雇用政策的には超過労働よりも有益であるとしている。また、リースター労相は、新たな制限は、使用者と雇用者の利害を十分に調整したものだとしている。

修正法案の内容に対しては、労働側は一部に反対しているが、使用者側は全面的に批判している。

小売業連盟は、小売業では季節的に臨時雇に大きく依存しているが、新たな制限でこの獲得が困難になり、柔軟な雇用が妨げられると、法案に反対している。また、フント使用者連盟(BDA)会長は、制限は雇用の妨げになり、労働市場を制約するとし、特にパートタイム雇用の請求権について、事業所の差し迫った事由がある場合にのみ認められないというのは、明確性と法的安定性に反すると、批判している。同会長は、また、期限付き雇用の新たな制約は、激しさを増す国際競争の下での雇用の柔軟性の必要に照らして、大きな後退だとしている。

これに対して労働総同盟(DGB)は、パートタイム雇用の請求権については積極的に評価しているが、期限付き雇用については、正当事由なしに締結することが禁止されなかったことを、不十分だと批判している。

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