児童売春抑制のためにアジア諸国で協力を

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

児童売春を売り物にした観光の盛況を背景に、児童売春を抑制するためのアジア諸国の取り組みが、ECPAT(End Child Prostitution in Asian Tourism)の働きかけにより実現した。

児童売春ツアーが盛んに行われているとされる、カンボジア、フィリピン、ベトナム、タイ各国の観光行政団体は、観光窓口のスタッフの訓練プログラムを作ることで合意した。というのも、児童売春を目当てにやってくる外国人観光客の斡旋を行っているのは、外国人が最も接しやすいタクシー運転手やツアーガイドであると言われているためである。

バンコクで開催された国連支援の会議では、この数年で多数のアジアの子供たちが外国の児童愛者によって虐待を受けていることが報告された。また、1996年の国連人権委員会・児童売春・児童ポルノ問題特別報告者の報告によると、アジアではおよそ100万人の子供たちが、性取引の犠牲者となっていると推測されている。そのうちタイでは、3万から3万5000人の子供が売春にかかわっており、うち10%が少年であるとも言われている。

このような状況は、1997年からの経済危機によって子供たちが貧困に陥り、売春の道を選択せざるをえない経済的背景も関係している。また、各国の児童保護に関する法的規制が不十分であることも原因である。国際的法律文書としては、1989年に国連で採択された「児童の権利に関する条約」があり、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの4カ国が、子供に対する商業的性搾取に言及した第34条について批准している。タイにも児童売春を禁じた法律は存在しているが、法の目をくぐってのツアーの増加は防ぎきれていない。

そのため、児童が職場で虐待や危険な目に遭遇しないために、学校教育での対策実施の動きがある。労働福祉省の児童保護・児童福祉局と教育省が合同で、児童労働に関する本を作成し、全国の初等・中等教育過程で労働問題を取り扱うことになった。ベンジャマット女性・児童労働部長は、この本を全国の小・中学校へ5万部送付し、児童が労働市場に参入する前に、労働権や労働安全基準、非常時における対策などを知るために役立てば、と述べている。

タイでは15歳以下の労働は、法律で禁止されている。そして、18歳末満の年少者が従事することが許可されているのは、新聞配達や花・果物・日用品・非アルコール飲料の集配・販売などであり、10kg以上の荷物を運搬させたり、危険な作業につかせることも禁止されている。

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