外国人労働者の雇用期間延長へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

2000年8月31日が期限となっていた外国人労働者の就労期間が、1年間延長されることになった。ブラチャ労相は8月23日、今後、外国人労働者の雇用期間を1年ごとに更新していくことを発表した。そのため、現在タイで労働している外国人労働者で就労延長を希望する外国人労働者は、11月30日までに労働許可申請をする必要がある。昨年も8月に、37県18業種、10万人の外国人労働者の雇用期間延長が決まったため、今回もその流れを受け継いだものと見られている。ちなみに、認可を受けていない違法外国人労働者の数は100万人以上とも言われ、その多くがミャンマー人とされている。

タイ政府としては、外国人労働者の代わりにタイ人労働者が雇用されることによって失業問題を緩和できればとのねらいがあるようだが、事態はそれほど簡単な問題ではない。というのも、外国人労働者が従事する職種は、いわゆる3K 業種で、タイ人が就きたがらない職種である。そのため、外国人労働者の雇用が認可されない場合には、国境に接する10県では、深刻な労働力不足になると懸念されている。

また、これまでに外国人労働者、特にミャンマー人とカンボジア人の就労に関するトラブルも多発している。例えば、サムットサカンでは、7月にエビ市場で働く不法外国人労働者400人が逮捕された。また、ラオスに接するチェンライ県では、精米所で働く不法外国人労働者が逮捕されたため、精米業の使用者が労働者が足りないと猛抗議。政府に対して、単なる不法労働者の締め出し政策ではなく、より現実的なもの、つまり労働節約的な機械導入のための融資や、段階的な5年間の雇用延長期間を与えるべきと提案した。さらに、タイとミャンマーの国境近くのマエソットでは、タイ人、台湾人、香港人などが経営する200以上の工場で、ミャンマー人が最低賃金の3分の1の給与で雇用されていたことが明らかになっている。

ミャンマー国境に隣接するターク県では、ミャンマー人労働者を雇用できない場合、2万人の労働者が不足することになるという。同県では、建設業とプランテーション業でのみ3000人のミャンマー人労働者の雇用が許可されているが、それだけでは他産業での高い労働需要には対応しきれないのが現状である。同県のタウェーキ産業委員会会長によると、4つの国境隣接県における200以上の繊維・縫製業工場で約3万人の労働力が必要とされているが、外国人労働者に代わるタイ人労働者を見つけるのは容易ではないという。というのも、2000年に入ってから、ターク県で少なくとも7回のジョブ・フェアを行い3000人のタイ人労働者が採用されたが、希望人数の2万人にはとうてい及ばなかったためである。同会長は、「もしターク県の産業が外国人労働者の雇用問題によって、経営がうまくいかなかった場合、同県の企業の経営者は1人当たり3000~4000万バーツ(1バーツ=2.5円)を商業銀行から借り入れているので、タイの不良債務は少なくとも60億バーツ増加するであろう。そのため、政府はミャンマー人労働者の雇用期間を4~5年に延長するか、もしくはミャンマー政府とミャンマー人労働者の受け入れを交渉して欲しい」と述べている。

一方、同県の商工会議所のパニティ所長は、タイ政府の外国人労働者の強制送還は結局のところ、労働者がタイに戻ってきてしまうために失敗に終わっていることを指摘し、政府の長期的な対策を望んでいると語った。

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