技能労働者不足で移民規制を緩和
情報技術(IT)やエンジニアリングなど、重要分野での技能労働者の不足が深刻化しつつあるのを受け、政府は、30年ぶりに移民規制を緩和する方針である。9月中旬に具体的な計画を表明する。
バーバラ・ローシュ移民担当相は、8月にパリで開かれた移民に関する国際会議(参加30カ国)で、「経済移民」が職場と社会に及ぼすプラスの効果を訴え、欧州諸国は、経済移民を合法的に受け入れる方法を早急に準備する必要があると力説した。この発言は、英政府が移民問題に関して大きく方針転換することを表明したものと受け取られている。
英国では、1950年代以降、大量の移民を受け入れてきたが、「1971年移民法」でほとんどの移民を禁止した(例外は、英国内で血縁者と居住する者、亡命志願者、英国内に多額の投資をする者)。
政府が30年間続けてきたこうした「閉鎖」政策を転換するに至った背景には、IT から保健医療までの各分野で、技能労働者の不足が深刻化していることがある。使用者ニーズに関する最近の調査結果によると、欠員の20%が技能労働力不足を原因とする一方、従業員のかなりの部分が必要とされる技能水準を満たしていないとする企業が全体の20%にも及んでいる。
今回の移民規制の緩和はまた、年金問題の解決にも寄与するものと期待されている。OECD の調査によれば、英国の人口は、2050年までに4分の1が65歳以上で占められ、年金受給者1人に対して労働力人口は2人にまで減少する。政府は、経済移民の受け入れによってこうした状況を緩和したい意向である。
移民規制の改正に当たっては、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが採用しているポイント制をモデルにするものと見られている。公共政策研究所が9月中旬にロンドンで開催する会議で、ローシュ移民担当相がその概要を明らかにする。
2000年11月 イギリスの記事一覧
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