首都圏で賃上げ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2000年8月11日、ラグエスマ労働大臣は、雇用労働省での記者会見で、マニラ首都圏地域賃金生産性委員会が賃上げを認可する見込みで、この結果年末までに最低賃金の引き上げが実施される可能性があると述べた。

これは、国内の6つの労働組合が提携して構成している労働者連帯運動(LSM)が、原油価格の高騰による一般消費者物価の上昇に伴い、75.5ペソ(1ペソ=2.23円)の最低賃金の引き上げを委員会に申請したことに関連して答えたものである。LSMによれば、最低賃金は1999年10月に25.5ペソ上げられたままで、日常品の物価は2.26倍にもなり、労働者の購買力は20%減少した。

賃上げに対する労働者の強い要求は、一部の上院議員の支持を得、幾人かの議員は、三者構成の地域賃金生産性委員会に対し、最近の物価上昇を考慮し最低賃金の引き上げを検討するよう促した。その議員の一人であるプロ・テムプレ・ブラス・オプレ上院議長は、LSMによる最低賃金の75.5ペソ引き上げ申請は、「正当で、筋の通ったもの」であり、ラグエスマ労働大臣に地域賃金生産性委員会が公聴会を開催する命令を出すよう促したと語り、LSMにより申請された賃上げ額は、戦闘的な労働組合、KMUの175ペソの要求と比較すると法外なものではないと説明した。

ラグエスマ労働大臣は、LSMの75.5ペソの賃上げを認可するかどうかは、結局は首都圏地域の社会・経済的状況によると述べ、地域賃金生産性委員会は、首都の社会・経済的状況を注意深く調査し、一般人はもとより、すべての部門における賃上げの影響を評価する必要があると強調した。特に、賃上げが中小企業に与える影響を考慮しなければならないとし、1999年10月、首都圏地域賃金生産性委員会が25.5ペソの賃上げを決定したが678社がその実施を免除する申請をしたことを例に挙げた。これらの会社の57%は経営悪化を申し立て、またペソ安による衝撃を理由にあげた小規模小売業者等も含まれたと述べた。

LSMは、同様の申請を他の地域賃金生産性委員会にも提出すると発表した。

首都圏地域賃金生産性委員会は、委員会の開催の告知後15日以内に公聴会と部門別会議を開催し、各関係部門が最終的意見を提出した30日後に、申請に対する最終的判断を行う。

フィリピン経営者連盟は、公式見解はまだ表明していないが、賃上げ率に対して、14ペソ、あるいは現行最低賃金223.5ペソの6%の賃上げが適当だという意見もでているという。

また、レナト・カエタノ上院議員は、75.5ペソの賃上げは多くの経営者にとってあまりに高く、40ペソの賃上げが合理的であると発言し、さらにこの賃上げは、2回に分割して実施されるべきだと提案した。

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