海外出稼ぎ斡旋業者取り締まり強化へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

プラチャ労相は、海外出稼ぎ労働者が支払っている職業斡旋ブローカーへの手数料に、10万バーツ(1バーツ=2.57円)の上限を設け、急増する出稼ぎのトラブルを解決するための政策を打ち出すことを発表した。また、こうした問題に対処するため、バンコクと台北市は、海外出稼ぎ斡旋業者の手数料に関するトラブル解決のために協力することになった。

現在タイ人労働者の出稼ぎ先で最も人数が多いのは台湾である。タイ人労働者は、長年タイ人と台湾人のブローカーに騙され続けてきたという背景があり、タイ人労働者は2年契約、月額1万2000バーツの職業に対して、ブローカーに平均15万~18万バーツという高額な手数料を支払わなければならない。もし、タイの労働省に斡旋を依頼した場合には、事務手数料として7400バーツを支払うだけでよいが、同省が斡旋する就職口は非常に少ないのが現状である。

こうしたブローカーに騙されてしまうのは、主に地方の農民が多いといわれている。出稼ぎに関する情報が少なく、高額な手数料を支払うために自らの農地を手放して出稼ぎに備えるが、騙されてしまい、農業に従事したくともすでに農地はない、という状況に追い込まれてしまうケースが多々存在するようである。

労働福祉省の発表によると、2000年に海外へ就労目的で渡航する労働者は21万人になるだろうと予測している。政府の雇用局では、このような海外出稼ぎに対して肯定的な見方を示しているが、出稼ぎに関するトラブルは増加傾向を示している(表参照)。政府が海外出稼ぎを肯定的に捉えている要因としては、海外からの送金が貴重な外貨獲得手段となっていることや(1999年では、手数料に総額110億バーツが支払われ、労働者から560億バーツの仕送りがなされた。)国内の失業問題を多少なりとも緩和できるとの思惑からである。

一番の受け入れ先である台湾では、外国人労働者の2割削減または5万人の削減を打ち出しているが、この影響を強く受けるのはフィリピン人労働者とベトナム人労働者であると見られている。台湾では1999年の大地震復興のために大量の外国人労働者を建設業で雇用してきた。台湾の外国人労働者約30万人のうち、タイ人労働者は約11万人雇用されているといわれている。

一方、第2位の受け入れ先であるシンガポールでは、2000年から外国人労働者は熟練労働者のみを受け入れるとの政策を打ち出し、入国前にシンガポール政府から認定を受けた労働事務所(タイには7カ所)で試験を受けなくてはならないため、タイ人労働者にとって厳しい状況となっている。

海外出稼ぎに関する被害件数と被害総額
  被害件数 被害額(バーツ) 補償件数 払い戻し金額(バーツ)
1996年 4,623 199,910,667 2,327 55,307,004
1997年 4,114 158,460,706 2,453 65,514,683
1998年 6,285 258,258,513 3,158 83,572,630
1999年 9,371 399,404,137 2,977 90,641,262
処罰を受けた海外出稼ぎ斡旋業者
処罰の内容 1998年 1999年 2000年*
警告 1 na na
20〜120日間の業務停止 3 24 10
免許剥奪 2 11 3
  • *2000年1月1日から6月8日まで
  • 出所:雇用局、検査・求職者保護部門
労働福祉省登録の海外就労者数と仕送り額
  1997年 1998年 1999年
海外就労しているタイ人(人) 183,671 191,737 202,416
仕送り額(百万バーツ) 51,910 58,845 56,910
  • 出所:労働福祉省
  • 注:1999年の出稼ぎ先と労働者数は、1位台湾11万5096人、2位シンガポール2万4525人、3位マレーシア1万7716人、4位ブルネイ7657人で、中東地域1万8777人、アフリカ473人、その他4069人となっている。

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