臨時職の急増と出生率の低下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

50万人を超えるスウェーデンの労働者が臨時職についており、これは雇用者全体の14%に当たる。臨時労働者は、1990年代初めに比べ50%増加している。

臨時職従業員の大部分は、ブルーカラーの若い女子労働者で、北欧諸国以外の出身である場合が多い。かれらが最も多くみられるのは、ホテルおよびレストラン業、小売業、病人や高齢者の介護といった低賃金部門である。労働力年次調査(AKU)に基づきスウェーデン労働組合総同盟(LO)が行った最近の研究により、こうした状況が明らかとなった。

この10年間で最も増えた臨時職の形態は、いわゆる「必要に応じた」職である。かれらは、この10年間で4万人から11万5000人に増加、労働力人口に占める割合は、1%からほぼ3%に上昇した。こうした臨時雇用の形態は、最も不安定である。使用者が朝電話をかけてきて、夕方2、3時間仕事についてほしいと言う場合もある。労働者は、明日仕事があるのかわからず、電話のそばで待機していなければならず、他の予定を入れることができない。臨時雇用のその他の形態としては、プロジェクト関連の雇用、代用要員としての雇用(vikaritat)、および試験的な雇用(provanstallning)がある。代用要員としての雇用は、ほとんどが介護部門であるが、この2年間で大幅に減少している。これは、新しい法律により、代用要員として3年間従事した労働者の長期雇用が義務づけられたことによる。

臨時労働者の雇用が最も頻繁に行われているのは、ホテルおよびレストラン業で、30%を超える従業員が短期契約を結んでいる。もうひとつの極端な例が学術分野で、1年から数年にわたって続くプロジェクトにおいて臨時職が発生している。

調査によれば、16~24歳のブルーカラー女子労働者全体の47%が臨時労働者である(男子労働者は26%)。状況は、年齢が上がるにつれて改善されているが、25~29歳では、女子労働者の29%、男子労働者の14%が、依然として臨時職に就いている。

ところで LO の研究者たちは、臨時労働者と低い出生率の間に直接の因果関係があるとしている。仕事の一時性は、社会不安を引き起こす。明日、または来月仕事があるかわからないときに、あえて家庭を築こうとは誰も考えない。現在と同程度に出生数が少ない年は、1750年までさかのぼらなければ見つからない。

もちろん、出生率の低下がすべて、臨時労働者の増加のみで説明されるわけではない。多くの要因が、出生率の低下をもたらしているのではないかと考えられる。1990年代に高い失業率を経験した後、失業率が低下した。この間、工業労働者のかなり低い平均賃金を基準として、その75%(後に80%へ増額)にまで育児休暇保険給付が削減されたことも、出生率低下の重要な原因になっているかもしれない。実際、エリクソンのように、公的な育児休暇保険給付を補足して、1年間は喪失所得を100%補償し、若い労働者やエンジニアを引き留めようとしている会社も出てきている。

出生率の推移(1000人当たり)
出生率
1989 13.66
1990 14.48
1991 14.36
1992 14.17
1993 13.53
1994 12.78
1995 11.72
1996 10.78
1997 10.23
1998 10.06

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