解雇時の先任権ルール緩和についての国会論議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

共同決定法の中で、先任権規定が最も大きな論争点になっている。1994年の規制緩和で、当時の非社会主義政権は、厳しい規定に例外を設ける権利を使用者に与えた。しかし同年、社会主義政党が政権に復帰し、ただちに法律を改正した。ところが昨年、従業員10人未満の企業が人員削減を行う場合、2人を厳格な先任権規定から除外できるとする法改正動議を緑の党(同党は小規模起業家の政党というイメージを打ち出したいと考えている)が提起し、社会主義政党以外の支持を取りつけた。

こうした動議が出されたのは、先任権があると、使用者は人員削減が必要になった場合、特殊な技能を持ち事業の継続に不可欠な従業員を先任権順位が低いために解雇せざるをえなくなるからである。動議は非社会主義諸党過半数で可決され、政府に対しこれを受けた法案提出を要求した。

法の準備過程で政府は、法律の適用を一定規模の企業に限定するのは法的に問題があることに「気づき」、従業員2人に対する例外規定が、企業の規模に関係なく全職場に適用される法案を提出した。この裏には、緑の党が社会民主党とともに政府案に反対するとの政府の読みがあった。緑の党は、先任権規定全般の緩和は望んでいないと見られており、他の非社会主義諸政党は、先任権規定の完全な廃止を求めている。

緑の党は、政府案に対し、先任権規定の適用除外を小規模企業の従業員2人に限定する法案修正案を出し、社会主義政党以外の党から全般的な支持を得ている。政府の法案には、労働組合は使用者の決定について労働裁判所に提訴できるという規定も盛り込まれていた。それに対し、社会主義政党を除く諸政党の新たな合意は、組合にこうした権利を認めていない。法的な手続きにかなりの時間がかかり、それでは規制緩和が意味をなさないという理由からである。

組合からみれば、非社会主義諸政党が提案している規制緩和は、人事問題に対する組合の影響力を制限する手段にすぎない。組合の考えでは、職場で人員削減が必要になった場合、先任権規定をどう適用すべきかは、使用者と組合が共同して的確に判断でき、また、当事者が例外事項について交渉することを認めた法律に基づいて、労使は常に最も現実的な解決策に至る。法律は指針を示し、それを出発点として当事者はよりよい選択肢を取り決めることができる。その意味で、組合は、先任権適用をめぐる労使の対立を解決するために現行法が果たしている役割を評価している。

一方、使用者と非社会主義政治家は、使用者が新たに雇われた労働者に責任をもつには柔軟性を高める必要があるという理由で、提案された規制緩和に賛成している。法案とその修正案は、2000年秋に正式に決定され、新法は2001年1月1日に施行される見込みである。

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