政府、失業保険制度の改定を提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

最近の世論調査で左翼党(旧共産党)の支持率が高まっていること(現在、過去最高の15~16%)が懸念されており、政府は、左翼党ではなく自らこそが福祉国家の真の擁護者だと、有権者に強く訴えたいところである。この数年間で失業率がかなり低下し、政府は、現在28万人を超える失業者を対象とした失業保険規則を2002年9月の議会選挙までに改定できるとみている。

給付水準は2段階で、つまり、2001年7月1日までに1度引き上げ、2002年1月1日までにもう一段引き上げられる。引き上げ額は後日決定されるが、国の経済状況による。給付が増額されるのは失業から100日間である。現行制度では、喪失所得の上限とされる1日当たり580クローネ(月額1万6000クローネ<1クローネ=10.98円>)までは、その80%の額が給付される。今年の失業給付総額は、約300億クローネになる見込みである。

上述のように所得の上限が1カ月1万6000クローネと低く設定されているため、喪失所得の80%の給付を受けている失業者は50%に満たない。また、給付の上限は、過去10年間変わっていない。そのため、SACO(大卒専門技術労働者労組連合)は、補足所得保険制度を導入して、上限を大幅に引き上げて月額4万クローネにする計画を発表した。SACO加入者で1カ月の所得が1万6000クローネに満たないのは約10%にすぎない。

政府が2000年7月上旬に国会に提出した政府案の中で、求職者に対し新しい規則が提案されている。現在、求職者は原則として、紹介された職を受け入れなければならない。受け入れなければ、失業保険の受給権を失う。とはいえ現実には、それほど厳しい態度をとっている職業紹介所の職員はほとんどいないことが、さまざまな調査で徐々に明らかになってきている。したがって、規則は多かれ少なかれ形骸化している。新たに提案されている手続きは、文言のうえでは強力なものに見えないが、現実にはかえって効率的な方法となるかもしれない。それは次のようなものである。

求職者は失業後100日間、自分の職能の専門分野および居住地域で職を探す権利がある。

  • 100日を経過すると、求職者は専門分野および居住地域を越えて職を探さなければならない。
  • 紹介された職を受け入れなかった求職者は、給付額の25%を40日間減額される。拒否が2度目になると給付額の50%を40日間減額され、3度目の拒否で給付を一切受けられなくなる。

この制度について、使用者が繰り返し批判しているのは、同制度に「さらに踏みこんだ規定」がないことである。つまり、失業者は失業保険給付制度の受給資格を何度でも得られるため、失業者が失業給付を完全に打ち切られる最終点が定められていないということである。これについてスウェーデン経営者連盟(SAF)は、失業者に職探しをする意欲を起こさせ、また、職を得るために転居を受け入れさせるような制度を望んでいる。

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