米越通商協定調印

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

アメリカ合衆国との二国間通商協定が2000年7月13日に締結された。1999年7月に基本合意がなされていたが、ベトナムの通信や金融部門へのアメリカ企業の参入をめぐり、ベトナム保守派の抵抗が根強くあった。しかし、米中貿易関係の正常化が進むにつれ、中国を貿易上の競争相手と考えるベトナム側が、通商協定締結に積極的になったと考えられる。さらに、ベトナムでは外国投資が1996年には80億ドルにまで達したが、その後、海外投資家がベトナム経済の変化の遅さに失望し、以来海外からの投資額は85%低下した。経済成長率も4年連続で鈍化している。汚職問題や非効率な行政などを理由に損なわれた内外の投資家の信頼を回復するためにも、米越通商協定締結の必要性が高まりつつあった。マイ・バン・ダウ副貿易相は、米越通商協定が、広範な分野にわたりWTO標準に準拠した協定であることから、WTO 加盟に弾みをつけることになると述べている。ただし、国営部門の合理化や、市場開放が脆弱な諸産業に与える影響など、改革の加速に伴う困難の克服が必要となる。

通商協定は、農産物や工業製品への関税の削減、他の貿易障壁の大幅な縮小、WTO 標準に準拠した知的所有権の保護、通信・サービスなどを含む分野への米国企業による投資の段階的自由化などを定めている。米国議会で承認されれば、ベトナム製品にかけられている平均40%の関税が約3%に削減される。そのため、ベトナム企業やベトナムで操業する外国投資企業は、靴、海産物、コーヒーなどの対米輸出の増加を期待している。マイ・バン・ダウ副貿易相は、ベトナム企業は関税削減後、適切なパートナーの選択や関連法令の検討を行ったうえ、積極的に米国市場への浸透をはかるべきだと述べるとともに、米国市場に参入する前に企業の業績を高め、製品の品質向上努力を怠ってはならないとした。同副貿易相は、通商協定発効後に期待される輸出額について具体的な数字を上げていないが、世界銀行は、ベトナムの対米輸出額が1年目に約8億ドル増加すると試算している。1999年の対米輸出額は5億400万ドル(貿易相手国中第7位)、輸入額は3億3475万ドル(同8位)となっている。

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