労働基準監督行政の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

全国には25万社の企業があり、そのうち監察の対象となるのは、少なくとも10人以上を雇用している企業で、3万5000社ある。しかし、労働基準監督官は312人しかいないので1人で多くの企業を担当しなければならず、明らかに人員不足である。昨年7つの省や市で行われた調査によれば、ハテイ省、クワニン省、ドンナイ省、ハイフォン市、ダナン市では労働基準監督官が訪れた企業は全体の5.3%、ハノイ市とホーチミン市では3.7%にすぎない。これらの監察対象企業の98%は、これまでに労働法を遵守し、労使紛争を経験したことのない国営企業である。同調査は、監察が形式的なものにとどまり、実効をあげていないという結論を出し、労働基準監督機能の増強が必要だとした。

監督官の90%以上が総合大学卒業者、5%が大学院卒者、1.3%が単科大学卒業者、1.3%が高校卒業者で、教育水準は十分だが、労働基準監督に関する高度な知識や最新の情報を得る機会が限られている。

3カ月の訓練課程などの専門職業教育を受けた監督官は、87.3%にすぎない。監督官には、外国語能力、コンピュータ操作能力などが要求されるが、現在一つの外国語に堪能な監督官は全体の5.1%だけである。まだ外国語を学んだ経験のない監督官も20.5%いる。情報技術については48%が基礎的能力を持つが、30%がコンピュータ操作について何も知らない。

昨年行われた調査で、使用者の60%、弁護士、研究者の45%が、現在の労働基準監督官の職務遂行能力は、ベトナム経済の発展段階が要求する水準を下回っていると回答した。「ベトナム・ニュース」紙は、政府が、監督行政の専門化をはかり、複数の監督官グループの間で重複した仕事をなくすなどで行政効率を向上させ、労働基準監督官訓練のための予算を増額させる必要があると指摘している。

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