失業から労働カニバリズムへック

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

スペインは歴史的に移民の国で、主にラテンアメリカ、第二次大戦後は欧州北部へ移民を送り出してきた。しかし、ここ何十年かは、仕事と新しい生活スタイルを求めてスペインに来る移民の数が増えつつある。外国人に対して発行される労働許可は年間約10万、欧州連合以外の国籍を持つ外国人居住者は、すでに100万人近くになる。スペインに1年以上在住する不法移民の合法化手続が7月まで続けられるが、すでに30万人ほどが手続を申請している。彼らが比較的簡単に仕事を見つける一方、スペインの失業率は相変わらず高い。ただし、移民労働者はたいてい、スペイン人が避けたがる農業や建設などの低賃金・重労働の部門で働いている。

例えばリェイダ県では、労働カニバリズムが横行している。労働カニバリズムとは、企業が人手不足のため、互いに労働者の盗みあいをしている状況のことである。何十年も失業問題を抱えつづけてきたのが、今度は移民労働者(特に東欧からの)が必要になっている。カタルーニャ州政府のフランコ労働長官は火曜日、カタルーニャは2万3000人のスペシャリストを必要としているが、これらの労働者は外国から探してくるしかないと述べ、プジョール州首相もこれを認める発言を行った。労組はこれに即座に反応、問題はシステムがうまく機能していないからで、バルセロナ県で何が必要かクエンカ県ではわからないなどということがあること自体おかしいと厳しく批判した。労組によると、リェイダ県には、東欧からの労働者輸入だけを目的とした一連の企業ネットワークがあるという。

2000年4月のスペインの失業率は9.5%だったが、リェイダ県(4.3%)、タラゴナ県(4.9%)、カステリョン県(4.9%)では失業率は低下の一途をたどっており、一方、ジローナ県でも失業率は5%をきり(4.9%)、完全雇用グループの仲間入りをしている。カタルーニャ州に続きアラゴン、バレンシア、ナバラの各自治州でも企業は人手不足を訴えており、特にホテル・レストラン業界は、労働者10万人を必要としている(うち2万人はバレンシア州)。溶接工、フライス板工、タイル張り職人、給仕、エンジニア、コンピューター技術者等の失業者リストは求人リストにとってかわられた。

外国人労働者

ユーゴスラビア人労働者の雇用の許可を待っている建設業者サントス・サラサル氏も、同じような状況を語る。「1999年12月には私自身ガリシア州まで足を運び、求人広告を出した。ガリシアのINEM事務所から人が送られてくるようになったが、来たがらない者が多く、来た者は役に立たなかった。公的システムに頼っていたのではらちがあかないので、自分の力でユーゴスラビアから労働者を連れてくることにした。もうコンタクトはとってあり、1年契約で連れてくるつもりだ」。リェイダ県では5カ月前から東欧の労働者(ポーランド、ルーマニア、ユーゴスラビア、ウクライナ)の大流入が始まっている。プジョール州首相は、リェイダ県では外国人労働者3000人を必要としている、と語っている。

タラゴナ県、カステリョン県、バレンシア県、バレアレス諸島、ナバラ州、アラゴン州でも状況は同様である。

カタルーニャUGTのシリアコ・イダルゴ氏によると、「確かに失業は減ったし、特定の職業では人手不足が生じている。しかし、これは政府が問題の予防策を講じなかったためである。十分な訓練を受けた若い世代がいるにもかかわらず、彼らの雇用は進んでいないという。

リェイダUGTのディオニス・オナ氏は、「4月に結ばれた雇用契約は6668件だが、そのうち5802は有期雇用、無期限雇用契約は794件しかない。こんな条件で、スペインの他の地方から、住宅問題を抱え物価が上昇中のリェイダに来たいと思う労働者がいるだろうか」と語っている。

見通し不足

「企業は経済成長を見通せず、適切なプランを組んでこなかった。もしきちんと計画をたててのぞんでいれば、必要な職業訓練を行い、必要な労働者探しの仲介ができたと思う」とは、州政府労働庁のシャビエー・カサレス氏の弁である。「ここ数年間、我々は、500億ペセタを職業訓練に投じ、そこから6万人の労働者を市場に送り、失業者数は35万人から16万人に減った。問題は、経済成長がハイスピードで続き、それに人口が追いつかないことだ」。カサレス氏は、他の地方での労働者探しがうまくいかない点を認めている。

CESでは、2000年1月にスペインでの労働者の移動についての調査をまとめたが、それによると気がかりな状況が浮かんでくる。「求人・求職の大部分は、公的サービスの枠組みの外で行われる。INEMを通じて結ばれる契約は、全体の15%にすぎない」。CESは、「異なる公的雇用サービスおよび職業斡旋会社との間での情報交換が不可欠」と結論づけている。

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