経済危機で低所得層に最悪の打撃

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

2000年5月30日に発表された政府統計局の定期調査によれば、1997~98年の経済危機の影響で、低技能労働者の賃金は1999年に34%も激減し、不況にもかかわらず賃金の上昇した高額所得者との所得格差が拡大した。報告書は、これは経済の根本的な変化に起因するもので、この傾向は、経済の回復以降も続くかもしれないと指摘している。

主な調査結果は次のとおり。

  • 下位10%の家計収入は1990年の370ドル(1ドル=63.04円)、98年の258ドルから、99年の133ドルに急減している。
  • 低所得層に入る家計が増えている。月収3000ドル未満の家計は、1998年の40%から99年の42%に増えた。
  • 上位20%の総家計収入は、下位20%のそれの18倍に達した。1998年には15倍であった。
  • 所得格差の測定に広く用いられるジニ係数は、1998年の0.446から99年の0.467に上昇した。

ポール・チュング主任統計員は、「不況が低所得層に打撃を与えたであろうことは分かっていたが、上位層の所得増は予測していなかった」と述べている。上位5位の職種(会社役員、専門管理職、財務・営業専門職を含む)は最高15%の昇給を得た。

同氏は、所得格差の拡大傾向は今後も続くかもしれないとする一方で、「1999年の数字は不況の打撃によるもので、今回の結果をそれほど危惧することはない」とも述べ、2000年以降は、給与所得は全面的に上昇するはずだと楽観的な見方を示した。

社会学者のタン・アーン・サー氏も、「社会的序列のすべての層で生活水準が向上すれば、所得格差の拡大それ自身は、社会的緊張をもたらすことはないだろう」と述べている。

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