パートタイム労働規則、施行される

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

パートタイム労働者にフルタイム労働者と同等の権利を付与する「パートタイム労働規則」が2000年7月1日に施行された。英国の労働力人口の4人に1人に当たる約700万人が恩恵をうける。

同規則は、EUの「パートタイム労働指令」(1997年12月15日採択)の国内法化を図ったもので、1999年7月に成立した「雇用関係法」の委任規定に基づき策定、施行された。

同規則の対象者は、週労働時間が30時間未満のすべての労働者で、雇用労働者のみならず派遣労働者や家内労働者も含まれるが、大半が女性である。

規則によれば、これら対象者が、同じ使用者のもとで同様な職務についているフルタイム労働者=「同等の労働者(comparable worker)」と比べて、賃金、疾病・出産手当、企業年金、職業訓練、休暇などの点で不利な扱いを受けることは違法となる。これまでは、例えば女性のパートタイム労働者が使用者から差別を受けた場合、性差別禁止法を根拠に、つまり間接的なルートを通じて、法的救済を求めるほかなかった。今後は、不当な扱いを受けたと感じた対象者は、その理由について文書による回答を21日以内に使用者から受ける権利を有し、また不当な扱いを受けた日から3カ月以内に雇用審判所に提訴することができる。

もっとも、同規則の不備を指摘する専門家も少なくない。例えば、同規則はEUの「パートタイム労働指令」の基準を満たしておらず、政府は今後数年のうちに、欧州司法裁判所を舞台に、その法的妥当性を厳しく問われることになると言われている。

中立機関である労働調査局が問題視しているのは、労使とパートタイム労働者の間のアクセスを確保する仕組みについて規定がないこと、早期退職や訓練と就労の組み合わせ方などについて何も触れられていないこと、そして特に重大なのは、当該パートタイム労働者が自分と「同等の労働者」を同定する「比較基準」が定められていない点である。

労働組合会議(TUC)もこの点を懸念しており、最も低い賃金で最も悪い条件のパートタイム労働者は「同等のフルタイム労働者」を探すのは極めて困難であると指摘している。そのため、今回の規則施行は、パートタイム労働者がフルタイム労働者と同等の権利を獲得する闘いが始まったことを意味するにすぎないと見る向きもある。

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