政府、国営部門失業対策費の一部を海外援助に求める方針

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ベトナムの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年9月

大蔵省は、向こう3年間に国営企業から解雇される約40万人の労働者に対し、新たな職場、年金、補償などを与えるための失業対策費7億5000万ドルの一部を海外援助に求める計画を作成している。これは大蔵省(国営企業)株式化局のタイ・フイ副局長が明らかにしたもので、同副局長によれば、これまで国営企業改革のあおりを受けた労働者への援助は、国営企業の株式化によって融通されており、海外援助による資金は一切使われていない。

政府企業改革委員会(NERC)と世界銀行は、失業者に対し、新たな職場や年金などを準備できないならば、国営企業改革に支障をきたすという見解で一致している。NERCのグエン・ミン・トン副委員長は、失業対策費を確保することが、「ベトナムにとって最も重要な問題である国営企業の余剰労働者問題に対処していくうえで、避けては通れない問題である。国営企業の40%は利益を必ず上げるというわけにはいかず、他の40%はほとんど何も成功しておらず、残りの20%は常に損失を出している」と述べている。また世界銀行も、ベトナム国内で2005年までに約60万人が国営企業での職を失うと見ている点で、ベトナム政府とほぼ一致しており、世界銀行のマーティン・ラマ氏によると、最も重要な問題は、余剰労働者に社会的なクッション(緩衝物)を与えるための十分な資金源をどこに求めるかということである。

国内には、公式な統計で5280社の国営企業があり、それらの資本の合計は106兆9000億ドンに上る。また全国の労働力人口の約5%が国営企業に雇われている。NERCは、2000年から2002年までの期間に、国営企業のうち1498社を株式化、リース、あるいは売却し、380社を統合し、368社を解散あるいは破産させる予定であるが、同委員会は、国営企業の解散と破産だけで7万5356人が失職すると推定している。政府職員によれば、新たな失業者への準備だけではなく、市場から退出する国営企業が残すことになる推計15億1000万ドルの負債を政府が処理する必要がある。

2000年5月最終週に開かれた計画投資省と世界銀行が共催したセミナーでNERCのグエン・ミン・トン副委員長は、NERCと労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)が共同で作成した9つの柱から成る行動計画を公表した。同副委員長は、この行動計画によって株式化が進められ、3年以内に多くの余剰労働者を抱える国営企業の非効率性が解消されるであろうと述べた。しかし、この新たな提案も、国営企業の債務を整理するというような従来の一般的な提案を焼き直したものにすぎないと、国営企業改革に悲観的な見解を持つ複数のセミナー参加者から反論が寄せられた。あるセミナー参加者は議論を総括し「政策、司法制度、国営企業法などについて、ベトナムの経済状態にあった新たな考え方を導入しなければ困難な問題は解決しない。特に、国営企業に関する法的枠組み、国家の指示と国営企業の役員会との間の役割分担などについて新たな戦略を検討する必要がある」と発言した。

2000年9月 ベトナムの記事一覧

関連情報