主要産業の雇用状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

製造業

キヤノンは、コスト削減と輸出製品の競争力強化のため、今年度中にも企業向け製品の生産拠点をキヤノン・タイランドに置き、タイでの生産を拡大する。タイで生産が予定されている製品は、プリンター、ファックス、コピー機などで、15億バーツ(1バーツ=2.70円)の生産規模となる見込みである。日本では、生産研究・開発に特化する予定である。この生産拠点の移転によって、現在4万7000人いる従業員に加えて、新たに600人以上の新規採用が見込まれている。

同社は、1990年からタイでの企業向けハイテク製品の生産を開始し、生産原料の66%をタイ国内で調達しており、品質基準が満たされていれば、今後もその割合を増加させていきたいとの意向を示している。また売上目標も、1999年に約220億バーツであったものを、2000年は330億バーツに設定した。同社の製品の99%は輸出向けであるが、輸出量はここ数年で20%増加している。2000年3~5月までの売上も予想以上の伸びで、生産拠点の移転による利潤増加が期待されている。

ちなみに、同社はタイで初のISO18001(衛生と安全に関する国際基準)を取得し、アユタヤの工場では1カ月に100万台のプリンターと10万台のファックス、1年間に100万台のコピー機を生産している。

一方、アメリカに本社を置くディスクドライブ・メーカーのシーゲイト・テクノロジーは、タイに5カ所ある工場の人員削減を行うことを2000年6月2日発表した。タイのシーゲイトでは、1997年のピーク時に4万4000人いた従業員は、2000年1月に3万3000人まで縮小し、現在は2万人となっている。ディスクドライブ・メーカーは、製品価格の暴落に直面しており、どのメーカーも、効率性と生産性をあげるために四苦八苦している。経営側は、この人員削減はタイでの生産規模縮小を意味しているのではないと述べている。

自動車産業

BMWは、初のアジア工場であるタイのラヨン工場の操業を2000年5月28日に開始した。この工場では、国内市場向けに3種類のセダンの組立を行い、1年に最大1万台の生産を見越している。将来的にはアセアン自由貿易圏(AFTA)への輸出生産拠点となることを目標としている。ラヨン工場は2万1000m2の広さを持ち、2630万米ドルの費用をかけて建設された。この工場の設立によって、約500人の新規雇用創出が見込まれている。

金融企業

金融業不良債権の削減や収入増加への努力もあって、経営改善の兆しは見えているが、外資系銀行との競争や市場の自由化といったなかでの雇用情勢は未だ厳しい。銀行業界では、この1年間に25%の人員削減を行ったといわれており、早期退職制度の導入などによってコスト削減に力を入れている。

支店の統廃合や、ATMの導入、1支店当たりの行員数の削減などを通じて生産性の向上に成功したといわれているのは、アジア銀行(Bank of Asia)とタイ農民銀行(Thai Farmers Bank)の2行である。反対に効率性が欠如していると指摘されているのは国営銀行のクルン・タイ銀行である。

しかし、人員の削減だけでは本当の企業再構築はできないとの批判や、早期退職制度によって、会社に必要とされる人材までもが流出してしまうといった問題もある。このような結果、銀行業の終身雇用の概念は、国際的な流れとともに消滅しつつあり、業績主義が採用されつつあるといえよう。

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