所得配分好転せず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

ブラジル地理統計資料院は、1998年に行った内国抽出見本調査結果を2000年5月に発表した。それによると、国民の1%に当たる富裕層が国内所得の13.8%を占め、国民全体の50%を占める貧困層は所得全体の13.5%を得ているだけであった。1988年には低額所得層の50%は12%、1%の富裕層は14.2%を得ていて、この10年間に所得配分はほとんど変化せず、定着している。

資料院のセルジオ・ビアンナ総裁は、状況は好転しつつあるが、社会指標の不均衡がブラジルの特徴になっていると評価した。10歳以上の収入のある経済活動人口を調べると、40%に達する低額所得層の平均所得は、月額125.04レアル(1999年の平均為替レートで約71.45ドル)であったが、10%の富裕層の平均は2477.61レアル(約1415.78ドル)となっており、40%の低額所得層の19.8倍の格差がある。

また、所得格差は、次世代まで続く可能性がある。調査によると、50%の低額所得層の家庭は上下水道の普及率が31.1%となっており、このクラスの大学在学率は2.8%であった。1%の富裕層の上下水道普及率は80.5%、大学在学率は25.5%となっている。貧困層の生活水準の低さは、子弟の教育も困難にして、長期にわたって所得格差修正を困難にしている。政府は最近の義務教育の就学率の高さを、教育行政の成果として発表している。1998年は7~14歳の児童は94.7%の入学率となり、先進国水準に達している。ただ入学はしても教育の質の問題から落第、中退が多く、学年と年齢が合わないことは普通となっている。開発が遅れた地域の生徒の落第経験者は90%を超えており、卒業が困難なために学校の席が足りなくなっている問題があると、総裁は発表した。

資料院によると、ブラジルの貧困は非常に深刻であり、全国の世帯の19.6%は、最低給料の半分の収入で生活している。0~6歳の幼児を抱え家族1人当たりの収入が最低給料の半分以下の世帯割合が30.5%を占めており、この年齢の幼児が衛生と栄養を必要としているにもかかわらず、家庭の貧困でこれに対応できず、将来に重大な後遺症を残すことを資料院は心配している。また家族の1人当たり所得が、最低給料の半分以下の世帯では、就労者の25%が正式登録しない給料生活者、26.7%が家事手伝い、23%が自営、4.7%が公務員、2.3%が使用者となっている。他方使用者の59.4%、公務員の41.2%、給料生活者の24.2%は最低給料の3倍以上の収入を得ている。

人種別所得格差は次第に縮小し、1998年の平均給料を見ると、「色人種は最低給料の2.6倍、黒人は2.7倍、白人は5.6倍となった、また、人種別平均教育年数水準は白人が7.5年、黒人と褐色は5.1年、文盲率は国内の平均が13.8%だが、白人8.4%、黒人は21.6%、褐色は20.7%となっている。世帯の1人当たり収入が、最低給料の半分以下の家族の家長を人種別に分類すると、白人は12%だが、黒人になると24.5%、褐色人種は30.4%となる。世帯収入が最低給料の5倍クラスでは、白人家長が15%、黒人と褐色人種は約3%となっており、収入が高いクラスは白人、低所得クラスは黒人と褐色人種と、人種的な所得格差も依然として存在する。

なお、資料院の調査は1998年の国民の平均寿命を68.1歳、女性72.1歳、男性64.3歳と発表した。調査担当者によると、幼児死亡率は低下したが、若年層の男子の死亡の増加が男性の平均を下げている。特に15~19歳の男子の死亡の68.5%は外的要因、つまり自然死ではなく、犯罪、自殺、事故死からなっており、これが、男性の平均寿命を3年下げていると計算している。

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