経済回復により、給料回復の期待

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

労組の社会経済研究機関であるDIEESEの発表によると、2000年1月のサンパウロ首都圏の就労者が受け取った給料支払総額は前年同期より7.0%、平均給料は9.5%、それぞれ低下した。ブラジル地理統計資料院の計算では、2000年1月に比べて2月の平均給料は0.8%、前年同期比で3.4%低下している。1989~1999年の失業増加は労働者のベア要求を困難にし、給料の据置きや安い給料の労働者との入れ替えによって平均所得を年々下げてきた。

2000年に入って国内経済に対する楽観論が強まっており、国家社会経済開発銀行の技官や経済研究所、コンサルタント会社などでは今後、過去の給料低下分の回復を予想し始めている。しかし、回復と言ってもインフレ分を取り戻すものではなく、これまでのような大きなマイナスでない程度である。ブラジル地理統計資料院は、2000年第1四半期のGDPは前年同期比で3.1%成長と発表、経済回復の強い兆候を示しているが、給料の低下が止まるのは2000年下半期からと見られている。

経済成長と給料問題を研究した民間のLCAコンサルタント社によると2000年2月には、全国の就労者の総所得は2000年中に3.1%、平均給料は2.6%後退と予想していたが、5月には総所得はプラス1.3%、平均収入はマイナス1.5%の予想に変更した。2カ月余の間に経済情勢がかなり好転したと、予想修正の理由を説明した。LCA社は、2000年内に雇用は2.8%増加すると予想した。

DIEESEも今年の雇用は2%増加すると予想しており、今年の実質給料低下はゼロ、悪くて1%低下と見ている。ただ雇用の質と所得の向上は、さらに長期間を要すると予想した。経済情勢に好転は見られるが、国際情勢が予期しない変化を起こすと、この予想は達成できない。DIEESEは、国内経済は年間3~4%成長はできないことを明白に示しており、アジア危機前の1997年の水準へ戻るには長期間を要すると見ており、LCAコンサルタントも、2001年に入っても1997年の所得水準や雇用水準などの指数に達することはないと予想した。

国内のエコノミストは、2000年に労働市場の好転をリードする部門は工業と予想する。国家社会経済開発銀行でも、今後の給料回復予想の理由として、工業の回復を挙げている。内国工業連合会の発表では、2000年2月の工業の給料支払総額は1月比で0.6%増加しており、1997年12月以来初めての増加となった。しかし、エコノミストは、2000年のインフレを6~7%と予想しており、少々の給料回復では実質回復はできないインフレ率となる。経済回復予想が各方面から出されているが、楽観論の盛り上がりにより、労組指導者は、なんらかのベアを確保するチャンスは過去よりも大きくなると期待している。

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