政府、2段階でIT専門家2万人にグリーン・カード発行

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年6月

シュレーダー首相が2000年2月に行ったハノーバーのコンピューター見本市での発言以来、燎原の火のように広まった外国人IT専門技術者導入論議(本誌5月号参照)は、400万人の失業者を抱えるドイツで新たに外国人労働者を導入することの是非とも絡んで、さらに進展した。だが、現実的必要性は否定しえず、3月に入ってノルトライン・ウェストファーレン州等州レベルで行動が開始され、さらに連邦政府が動いて、ドイツが国家としてIT部門の人材強化に具体的に乗り出す動きとして急速に進展し、シュレーダー首相と産業界代表はベルリンで3月13日、EU諸国の外から2段階で2万人の外国人IT専門技術者を導入し、グリーン・カード(労働許可証)を発行する緊急計画の策定で合意した。

フント使用者連盟(BDA)会長等経済界からは、IT部門に限らず、機械製造等他の部門でも、専門技術者を要する業種では優秀な外国の人材にもっと門戸を開くべきであるとの意見が出ていたが、エデルガルト・ブルマン教育相を初めとする与党社会民主党(SPD)、野党キリスト教民主同盟(CDU)ともに、グリーン・カード発行部門の拡大に反対して、これを受けて連邦政府も今回のグリーン・カード発行はIT部門に限定することにした。

緊急計画の合意には、以下のような内容が含まれている。

第1段階として、まず1万人の外国人IT専門技術者(大学卒業資格をもつトップ・ランクの資格者に限る)に労働許可を与え、その後第2段階で、さらにIT専門労働力の需要があるかが検討される。外国人技術者への労働許可の期間は3年から最高5年までとし、賃金等勤務条件は国内の同等資格者と同様とされる。また、行く行くはドイツ国内の労働力でこの部門の需要を賄うことが最重要課題とされ、そのためにこの部門の職業訓練教育と継続教育が重点的に強化され、経済界は2003年までに「雇用のための同盟」で合意された4万人に加え、さらに2万人の訓練職を提供しなければならない。また連邦雇用庁は、IT部門の継続教育措置への参加人数を、早急に現在の3万6000人から4万人に増加させるものとする。

労働総同盟(DGB)は、シュレーダー首相の2月提言以来IT専門技術者の導入に賛成していたが(本誌2000年5月号)、この連邦政府の緊急計画を受けて、さらに EUレベルでもIT部門の専門家養成に取り組まなければならないとしている。エンゲレン・ケーファーDGB副会長は、欧州が米国に対してIT部門で後れを取っているのは争う余地のないことだが、EUとしてこの部門を強化する教育・研究の調整はいまだなされておらず、これを促進していかなければならないとしている。そしてそのために、将来的に欧州社会基金の有効利用を考慮すべきことを提言している。

このSPD主導の緊急計画の内容に対しては、連立与党の一翼を担う緑の党から、優秀な人材を確保するには不十分だとして、内容改善の要望が出されている。同党は、期間を最低5年にすべきこと、技術者の家族の呼び寄せを可能にすること、期間後に技術者のドイツ国内での継続雇用を可能にすること、企業のみでなくドイツの大学でもIT部門を強化して外国人をさらに招き、ドイツの大学で学位を取得した後にドイツ国内で雇用されるようにすること等、改善策を積極的に提言している。

その後3月29日、連邦雇用庁は外国人IT技術者の募集を開始した。方法は3種類あり、第1はIT技術者がEメール等で中央職業仲介所(ZDA)に直接申し込む方法、第2は企業が公共職業安定所を通して募集し、応募者名がZDAに転送される方法、第3は事業所が管轄公共職業安定所の事前承認を得て、直接外国で募集する方法である。

2000年6月 ドイツの記事一覧

関連情報