海外人材派遣会社に多額の労災賠償命令

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年5月

中央労使関係委員会は、台湾に派遣され、就労中にスティーヴンズジョンソン症候群(SJS)に罹ったと訴えていた労働者の主張を認め、人材派遣会社に対し、67万1000ペソ(1ペソ=2.54円)の賠償金の支払いを裁定した。

弁護士によると、被災者は、現在ほとんど失明し、1999年9月よりバグイオ総合病院で寝たきり状態に陥り、体は衰弱している。

SJSの病状の特徴は、高熱と激しい口内炎、結膜炎、皮膚炎が特徴で、約10%が失明し、10から15%が死に至る。米国では、多くのSJSは、麻薬に関係したことにより発病するが、フィリピンでは、多くの場合労働者が化学薬品に曝されることにより発病する。

労働者の名前は、マルセリオ・ウォーキング氏で、マニラに本社を置く人材派遣会社から、月給2万6000ペソで、1999年1月19日より台湾のエレクトロニクスの工場に派遣され、機械作業員として働いていた。この時、化学薬品に曝されて仕事をしていた。

ウォーキング氏は、2カ月後に、身体中にアレルギー症状が発生し、数回通院した。台湾の使用者は、台北の病院に連れて行き、貧血、皮膚炎、腎臓病に対する治療を受けさせたが、医師によると、その症状は、SJS患者のもので、化学薬品に曝された後、2日から2週間で現れる症状だった。

ウォーキング氏は労働契約を繰り上げて終了することを選択し、フィリピンに送還されることを要求したが、使用者は、ウォーキング氏がまだ使用者に対し負債があると主張した。このため、病気による契約の繰り上げ終了が認められなかった。

中央労使関係委員会は、ウォーキング氏の病気は、機械作業員としての作業中に、彼がいくつかの金属と化学薬品に曝されたことにより引き起こされたと判断した。また、台湾への渡航以前には、この病気に罹っていなかったことを確認し、もし使用者が労働者を保護するよう必要な処置を採用していれば、労働者はこのような病気に罹らなかったと判断し多額の賠償を人材派遣会社に命じた。

賠償金の主な内訳は、精神的、肉体的損害に対する賠償45万ペソ、人材派遣会社がウォーキング氏に契約していた残りの8カ月分の給与12万6720ペソ、医療費補助3万3575ペソである。

SJSは、フィリピン人では、1996年に台湾の工場で働いていた2人の女性が最初に罹った。台湾では、この1年間に、39人の海外からの労働者がSJSだと診断された。

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