在宅ホワイトカラーは労働安全衛生法の適用外に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年4月

労働省は2000年1月26日の国会公聴会における証言で、自宅を事務所にして(ホームオフィスで)働くホワイトカラー労働者の使用者が、如何なる連邦安全衛生基準違反に対しても責任を問われないとした。会社まで通勤する代わりに、自宅から情報機器を用いて会社と情報をやりとりしている(テレコミューティング)労働者数は今や2000万人に達したと推計されている。労働省は1999年11月に労働安全衛生局のホームページに掲載された手紙の中で、事務系ホームオフィス労働者の労働安全衛生についても使用者の責任を問う意向を示したが、使用者や共和党議員などからテレコミューティングの普及を阻害し、個人のプライバシーを侵害するものであると反対され、手紙の内容の撤回を余儀なくされた。その後、同省はテレコミューティングをしている労働者に労働安全衛生法を適用するかどうか回答を迫られていた。

その一方で労働省は、ブルーカラー労働者が家庭で生産活動に従事する場合には、その使用者が危険な生産活動に対する責任を負うとした。ただし、この場合でも労働安全衛生局(OSHA)は苦情申し立てや依頼があった時にのみ自宅の職場の監察を行う。その結果、家庭で働く労働者の労働安全衛生に対する使用者の責任は、家庭での仕事がホワイトカラー労働かブルーカラー労働かで違った扱いを受けることになる。産業界や共和党議員は労働省の新方針を歓迎しており、この方針が今後の労働省の諸規則にも反映されるよう期待している。

労働省は、こうした方針が現在作成中の人間工学的基準にも適用されるとの見通しを表明した。反復運動損傷(RSI)に関する包括的な人間工学的基準の策定は現在、産業界からの反対を受けている。産業界からの圧力で2000年1月末、OSHAは人間工学的基準に関する意見の受付け期間を当初の予定より約1カ月延ばし2000年3月2日までとし、1回目の公聴会を3月13日に予定している。労働省がこのほどホワイトカラー在宅労働者を労働安全衛生法の適用除外とするという妥協を示したことから、反対派ロビイストからは人間工学的基準に反対しやすくなるかもしれないという声も聞かれる。

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