政府、職場関係法改正法案を取り下げ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

1999年に特に注目されていたのは、政府が提出した職場関係法案が成立するかどうかであった。大方の予測は、その全てが承認されることはないが、いくつかの重要な改正が行われるであろうというものであった。しかしながら政府は上院の勢力均衡の鍵を握る民主党の反対に直面し、結局法案を取り下げることとなった。

法案取り下げまでの経緯

政府は1998年の総選挙の際にさらなる労使関係改革を約束し、1999年職場関係(More Jobs and Better Pay)法案を議会に提出した。現政権は上院で過半数を制していないため、法案成立にあたっては野党民主党の合意を取り付ける必要があった。これに対し民主党はオーストラリア労働組合評議会(ACTU)のキャンペーンや上院での専門家の証言等を考慮した結果、この法案を認めない方針を打ち出した。

法案の提出は既に1999年2月から予想されており、ACTUは早くからそれに反対する意思を表明し、各地で反対デモが繰り広げられた。法案自体は1999年7月1日に議会に提出され、審議が続けられたが、結局民主党が法案全体を拒否する決定を下したため、政府は1999年12月2日に法案を取り下げたのである。ただその後、民主党は政府に対し法案の一部再提出を求めている。

法案の内容

改正法案は、スト実施の際の秘密投票義務化、更なるアワード簡素化、労使関係委員会の権限縮小、組合代表の職場立ち入り権の制限とクローズド・ショップ禁止の更なる強化、不当解雇禁止規定適用対象者の限定等を主な内容としていた。

民主党はこれらの規定全てを認めなかったわけだが、リース職場関係省長官はその後2つの改革の方針を予示している。すなわち彼は第1に法案のうち民主党が承認可能な部分のみを実現すること、第2に労使関係制度の完全な規制緩和、を検討していると伝えられている。その意味で更なる労使関係改革の方針は2000年においても継続されることとなる。

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