労働市場での人種差別、1990年代に悪化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

労働市場における人種差別が1990年代に悪化したことを示す調査結果が相次いで報告されている。

まず、労働組合会議(TUC)が12月6日に発表した調査報告によれば、1990年代を通じて白人労働者の失業率は6%まで低下したにもかかわらず、黒人やアジア系の労働者の失業率は1990年代初頭と比較して2ポイント上昇し、現在13%に達している。これら人種的マイノリティの失業率は、労働市場全体の改善が進んだこの1年間に特に悪化しており、地域別ではロンドン、イングランド中西部、グレーターマンチェスターで顕著。とくに後の2地域では20%近くにも達している。

こうした調査結果を受け、TUCは対策として、人種的マイノリティの採用・維持・昇進を監視する義務的なスキームを労使共同で策定、実施することを提案している。また政府に対しては、長期失業者対策プログラムである「福祉から仕事へ」を人種的マイノリティの雇用創出のために活用するなど、人種差別の撲滅を労働市場政策の優先項目の一つに位置付けることを勧告している。

労働市場における人種差別の悪化は、政府の『労働力調査』(1999年12月発行)でも明らかだ。1998年夏から1999年春にかけて6万の家計を調査したところ、人種的マイノリティ(男性)の失業率は白人の2倍であり、とくにパキスタンとバングラデシュを出身地とする人の失業率が高いことが判明した。その原因の一つとして国家統計局は、これらの人々が資格を保有していないことをあげているが、資格に関する別の統計は、白人と同様の教育をうけ同様の成績を残しているインド人が失業の点ではかなり劣性にあることを示している。

人種的マイノリティの失業率が高いもう一つの原因として国家統計局は、これらの人々がロンドンなど都市部に集中している点をあげている。都市部の失業率は一般に全国平均よりも高いのは事実だが、その都市部でも人種的マイノリティの失業率は白人の2倍になっている。

人種平等委員会は、教育・キャリア・採用に関する人種的マイノリティの要望に政府は十分に応えきれていないと非難している。

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