好調続く労働市場

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

失業率、物価上昇率、経済活動率など労働市場の動向を示す主要指標が依然として改善を続けている。

まず失業について、ILOの労働力調査によれば、1999年10月時点で失業者数は170万人、前年同月比で8万6000人減少した。失業率は5.9%で、1984年に同調査がはじまって以来最低の水準を記録した。求職者手当申請者数も10月の1カ月間に8400人減少し、申請者総数も120万人まで減少した(労働力人口の4.2%)。

雇用はとくにサービス部門で伸びており、製造部門では逆に1999年1~9月の間に15万6000職が失われた。とはいえ、英国産業連盟の地域別動向調査によれば、同年12月までの過去4カ月間にわたって製造部門の産出高はほぼすべての地域で上昇している。

労働市場の好調さは経済活動率にもあらわれている。国家統計局データによれば、経済活動人口(就業者プラス求職活動者)は1999年7~9月期に2920万人以上に増加し、統計を取り始めて以来最高の水準を記録。一方、非経済活動人口は同期に3万3000人減少し、760万人(労働力人口の21%)になった。うち530万人は求職の意志のない者で、210万人は求職の意志はありながら実際には求職活動をしていない者である。いわゆる「福祉から仕事へ」政策は労働市場への参入者の増大を狙いとしていただけに、政府は今回の結果を歓迎している。

やや懸念されるのは賃金水準の最近の動向だ。これまでは失業水準の低下が賃金水準の上昇を引き起こさず、たとえば1999年7~9月期に平均実収賃金の伸び率は0.2%低下していたが(4.7%)、同期を過ぎた頃から上昇に転じ始めている。かなり減少したとはいえ失業者数はなお170万人おり、にもかかわらず賃金水準が上昇し始めたということは、労働力の需給に関して深刻なミスマッチがあることを示唆している。これをイギリスの労働市場の抱える構造上の問題だとするエコノミストもおり、その要因として伝統的な男子非熟練労働力に対する需要が激減していること、住宅所有率が上昇したため労働力の流動性が低下していることなどを指摘している。

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