岐路を迎える労使共同運営方式

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年3月

週35時間制に関するオブリ第1法およびオブリ第2法によって引き起こされた議論から、労使共同運営方式の原則が揺らぎ始めている。

社会保障機関(各社会保障金庫、失業保険、各補足退職年金金庫など)のこのような運営方法が最初に導入されたのは1910年である。この運営方式の原則はさまざまな社会保障機関の運営に「労使双方」を関係づけるというものだ。国も、社会保障および各社会保障機関の資金調達方法に関する諸政策を決定するという範囲で、とりわけ政府の年次予算を通して、積極的な役割を果たしている。したがって国はこの意味で、社会保障制度の主要な行為者であり、労使当事者(組合と経営者)に対する仲裁者の役割も果たしている。したがって、中立的ではないし、場合によってはその特権の範囲を越えることができると一部の労使当事者は考えている。

先ごろ発生した週35時間制財源問題でも、この点が論議を呼んだ。と言うのも、オブリ雇用相は第2法の準備過程で、成立した第2法に定められている支出の一部を資金調達するために、全国商工業雇用協会UNEDIC(失業保険管理機構)もしくは社会保障の基金に依存することを目指していたからである。

これは一方で、このような解決策を拒否する組合間に共同戦線を構築させ、他方で経営者たちの拒否を動員する結果になった。フランス企業運動(MEDEF)は「政府による社会保障機関の国有化」を非難しており、労使共同運営機関から脱退する可能性もある。

労使双方が政府は「レッド・ライン」を踏み越えてしまったと見ており、一部の組合はMEDEFほどではないにせよ、労使当事者との団体交渉を省略してその決定を押しつけようとする政府の試みを以前から批判していた。

政界でも同様の反応が示された。すなわち、保守政党と「連立左派」の一部派閥が「取り繕った資金調達」(「ユマニテ」1999年10月26日付)を非難していた。こうした反乱に直面した政府は、その主張を後退させ、組合の圧力と経営側の最後通牒の前に譲歩を余儀なくされた。

これによってフランス式「労使共同運営方式」の脆弱性が明らかになり、おそらくはその基盤と運営方法の見直しも必要になった。現状のままでは、フランスの労使共同運営方式が危機に見舞われる可能性もあるからだ。ここには、労働団体や経営者団体だけでなく、国とも関係する根本的な問題が存在する。

労使共同運営方式は労使当事者間に一種の「社会協定」が存在していた時代に幸運な時期を経験した。存在する社会的諸力の間の均衡ではなく妥協のシステムにおいて各々がその役割を果たしていた。

国は「国民連帯」の原則を代表し、最も恵まれない人たちへ基礎社会給付(「社会ミニマム」)を保証する一方、労働団体と経営者が同数ずつで社会保障を運営していた。労働団体がまだ相対的に強く、「代表性」に関して認知された正当性を有していたので、この均衡が今日まで可能だった。この場合、労働団体は経営者にも使用者にも圧力をかけることができたし、その委任者たちの利害の擁護者をもって任じていた。

今日、フランスの組合加入率は9%以下(民間部門では6%以下)に落ち込み、その正当性は弱化した。その上、労働団体間の対立から新しい小規模団体が現れ、分化がさらに進んだ。しかし、「グループ・デ10」など、一種の連盟も存在する。公共交通、郵便、国民教育、病院などの一部の部門では、基準を国が定めた代表団体の概念が検討し直されている。

フランス式「労使共同運営方式」はおそらく、社会だけでなく、経済や政治の動きに対処するためにも、改革が必要なのだろう。しかし、労使当事者にあっても、今日の状況は複雑であり、とりわけMEDEFは労組との対話戦略を重視しながら、ウルトラリベラルな立場を主張している。この「社会調整システム改造」戦略は、現役労働者だけに限定した・そして、競争関係にある諸機関によって運営される保険の論理に基づいたム制約的な連帯の概念を組合に支持させ、組合を国と対抗させることにある。

このところ(とりわけ、失業の増大と人口老齢化のために)フランスで進められてきた社会保障国営化の傾向に対し、MEDEFはその民営化戦略を展開させようと試みている。こうした経営側の動きに対し、CFDTなどの一部の労働団体は、その利害と国からの自主独立を主張しつつ、経営側の正当な懸念(社会保険料の負担の問題など)にも配慮した妥協策を模索している。

一方、国はというと、民主的な手続きによって定めた規則の枠組みの中で、連帯の名の下に「社会的弱者」の権利と利害を擁護し、同時に団体交渉による労使の自主運営を尊重していかなければならず、その役割は難しくなっている。したがって、国による労使関係の統制と社会的弱者の切り捨てにつながりかねない自由主義的労使関係という2つの危険を回避し、新たな労使運営制度を守ることが新世紀の重要な課題の1つを構成することになる。それには、組合の正当性を確固たるものにするために組合の自由と独立を認知し、経営側に交渉のテーブルへ座らせることが必要になるだろう。アングロサクソン的な労使関係の概念に支配された欧州にあって、労使共同運営はフランス的な例外なのかもしれない。

2000年3月 フランスの記事一覧

関連情報