世銀、汚職についてのレポートを公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

「透明で良好な統治を実施する、明白で信頼できる汚職防止の政策が国家間の競争において相対的な優位を保つのに必須である」、これは、世銀の反汚職計画に関する最新の経過報告の結論である。

報告書によると、フィリピンは公共および民間部門を通じて、広範囲で根が深い汚職がはびこり、最も顕著な例は、大統領に密着した有力な悪徳業者が増加し、マルコス時代に国家を食い物にしたため告発された多くの業者が、現政権から有利な待遇を得ようと試み、さらに過去の収賄と汚職に関する長期にわたる係争中の裁判を解決しようとしていると説明している。

近年、世銀、IMF等の国際的金融組織は、発展途上国の汚職問題を検討する必要を強調していたが、今回の報告は、アジア経済危機の回復過程においてフィリピン政府を明白に批判した。

フィリピンの汚職は、過去、文化の一部として見過され、黙認されてきた問題である。報告は、この問題への新しい分析を強調し、フィリピンでは、汚職と言う「癌」は開発計画を浸食し、貧困層と事業主に無意味な課税をすると説明している。

報告書は、マルコス政権以後、多くの反汚職的発議が行われ、制度的基盤が生まれていたが、この問題の処理は、エストラーダ政権の選挙運動期間中と最初の1年間においては、有利でしかも必須のものであったと指摘している。

問題解決の建設的な要素としては、問題についての十分な認識、主要政府機関での反汚職計画、公共部門での汚職を告発する特別な組織の設立を挙げている。また、汚職を暴露するメディアの役割を強調し、フィリピンの熱しやすい市民社会では、メディアは公衆の関心を問題に向け、撲滅活動において重要な役割を果たすと報告している。

国際的な観点からは、フィリピンで汚職と戦う強力で信頼できる計画は、次ぎの3つの理由により極めて重要であるとしている。

  1. 汚職が国内外の投資決定に影響を与える妨害要素であることは、事業調査、メディア、反汚職監視組織で頻繁に例証されている。
  2. 反汚職政策は、エストラーダ政権の貧困救済政策を補足するのに欠くことができない。汚職は、大規模な成功する反貧困計画の敵であることは現在では確定しているし、開発のための資源を搾取し、貧困地域への行政サービスを貧弱にし、そして、貧困層を救済すべく政府の意思と能力、政府への信頼を侵食する。フィリピンの市民意識の調査によると、善政と貧困救済への多大な努力は密接に結びついている。
  3. 汚職問題は、開発援助資源を配分するための重要な国際的基準として提出されており、援助を票決する上で、汚職問題がどんなに強調されているかについて明白な記述が期待されている。

報告書によると、文献調査ではフィリピンの汚職は根深く、複雑な問題である。また、汚職は、国によって法令や分野が様々である。それで、それぞれの国の文化や歴史を確実に把握した、特別に制作された計画が必須となり、汚職との戦いは困難で、マラソンのような長期の確実な努力を要求されると述べている。

世銀の経験では、汚職問題は良く計画された反汚職計画が重要で、短期間に成果を上げると指摘している。

1999年~2000年までの世銀の支援政策での反汚職行動計画は、3つの段階を強調している。

  1. 世銀の金融プロジェクトにおいて不正行為と汚職の防止。
  2. 世銀の業務において汚職を最大関心事とする。
  3. 支援を要求する政府機関を援助する。

この基礎作業と政府、市民社会への助言において、世銀は、1999年~2002年において次ぎの優先条件を特記している。

  • 世銀の金融プロジェクトにおいて統治を改善する。
  • 世銀が支持する政策計画の設計、実行、監視をする上で市民社会を参加させる。
  • 多くの取り締まりと法制改革を通じて、金融、援助、公共部門を改善させる。
  • 厚生、教育、公共事業、高速道路に関係する各省での調達と財政運営システムの改革。
  • 地方政府の強化と地方分権化の促進。
  • 政府の反汚職計画の設計と実施の援助。

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