マレーシア・サバ州のフィリピン労働者とミンダナオ島の経済情況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

フィリピン人のマレーシアのサバ州での不法移民者が増加し続け社会問題化している。

マレーシアのダタック・シッド・ハミッド・アルバー外相はクアラルンプールで、フィリピン国内の政情不安により、サバ州に避難した15万人以上の難民は、フィリピン国内の平和が回復したため帰国すべきだと述べた。更に、ダッカ・フィリップ・ヤング国会議員は、不法移民問題について、政府は、根本的な解決策の提案を目指して、政治的解決に努めなければならないと発表した。また、サバ州パングリマ・オス・スカム首相は、政府は、不法移民問題を解決するためにフィリピンのような隣国の協力の必要性を強調する一方で、移民を1970年代から受け入れ、しかも移民総数が減少していないため本国への送還は容易ではないと説明した。

この避難民の多くは1970年代と1980年代のミンダナオ島におけるモロ民族解放戦線の騒乱、その後の経済不安によりサバ州に移った。移民局の雇用担当者によるとその多くは、建設、プランテーション産業で働いている。各産業におけるフィリピン労働者の収入は、建設産業では1カ月に少なくとも7935ペソ、プランテーション産業の魚業部門では4230~5290ペソ、メイドは3175~5290ペソ稼ぐ。マレーシアの平均収入は、3092ドル(約12万4298ペソ)で、フィリピンの907ドル(3万6460ペソ)より2185ドル(8万7838ペソ)多い。

マレーシアは、1990年代中期経済情況は明るく、マハテール首相の「ビジョン2020」の実現を目指していた。この時期、労働力不足を解決するため、政府は不法移住労働者の居住権を一時的に承認した。1997年からのアジア経済危機により、経済情況は変化し、マレーシアは、金融危機に曝された。その後、マレーシアの経済は回復し始め、IMFの予測では、2000年の経済成長が6.5%であるが、まだ完全には回復していない。

フィリピンの国会議員とミンダナオの行政当局は、政府は、大量の移民労働者の本国送還の準備は出来ていないと説明し、イスラム問題の行政長官アクマッド・トマウイス氏は、「東マレーシアの良好な経済状態が、我国のイスラム教徒を磁石のように引き付け、サバ州の牧草地は緑に溢れていると信じられている」と述べた。

サバ州への移民の多いムスリム・ミンダナオ自治地方の地域発展計画委員会の報告は、この地域が最貧状態であることを明確に表現している。貧困者の発生率は、1991年の50.7%から1997年は58.6%に上昇し、これは、西部ミンダナオ地方の39.8%、北部ミンダナオ地方の46.8%、南部ミンダナオ地方の37.9%、中央ミンダナオ地方の49.1%より高い。尚、全国平均は32.1%である。平均家族収入は、1997年7万4729ペソで、1人当りの年収は1万1214ペソ以下である。識字率は1996年で89%だが、これは全国平均の94%と比較すると低い。幼児死亡率は1000人に対し63.6人である。

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