ナショナルスチール社が倒産

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

フィリピン最大の鉄鋼会社であるナショナルスチール社(NSC)が倒産し、フィリピンスチールローリングミル協会、フィリピンスチールミル協会、フィリピーノガルバナイザー協会の会員が買収を申し込んでいる。

1999年11月7日、NSCの2000人の労働者、彼等の家族及び同情者が大集会を開催し、多額の負債を抱えた危機的経営状態にある会社を再建し、職場に復帰できるよう希望した。ノリ・フィグエロア NSC労組副委員長は、2カ月以内に職場復帰できるよう、経営者側が努力するよう要請した。

イリガン市長フランクリン・クイジャーノ氏は、負債に悩む NSCを救済するよう国に要請してきたが、労働者とその家族だけでなくイリガン市の経済も e響を受けたと述べた。イリガン市は、南部の産業都市として知られるが、NSCは、最大の従業員を抱え、毎年最高納税額の1億5600万ペソ(1ペソ=2.71円)を納税する事業所だった。労働者に支払われる5億4000万ペソの給与の多くは、市場、学校、病院、デパート、酒場で消費されていた。

労組により提供された資料によると、NSCは、3億ペソのくず鉄を購入し、供給過程で8億5800万ペソを、様々なサービスに2億5300万ペソ支払っていたが、これらの契約先は主にイリガン市に所在していた。フィグエロア NSC労組副委員長は、この地域以外の様々な企業も NSCの閉鎖の影響を受けると指摘し、NSCの溶鉱炉用のレンガを製作していたレフラクトリ会社は、約30%の市場を失い、国有電力会社は、年間使用料7億ペソの顧客を失うと例証した。

労組は、NSCの閉鎖は、政治、社会的にもイリガン市に影響を与えると警告している。労組幹部のシーザー・パデラ氏は、数千人の子供が通学を諦めざるえなくなり、大量の失業者の出現により、犯罪発生率は上昇すると述べた。

フィグエロア NSC労組副委員長は、世界的な製鉄会社のイスパットインターナショナル社が、1999年初期の提案より良い条件で資本参加の条件を提示したと NSCの経営者が明らかにしたと発表した。また、労組のある幹部によると、1999年10月に、イタリアの企業のヅフレコ社の代表者が、NSCを調査し投資を打診した。

1999年11月19日、ジョセ・パルド商工長官は、NSCを再建するために同長官とフェリップ・マデラ国家経済開発庁長官、エドガード・エスプリッツ財務長官、ベンジャミン・ヂオーノ予算行政管理長官からなる特別組織を設置したと述べ、少なくとも1億3000万ドルの新規資本注入が必要だと語った。

マデラ国家経済開発庁長官によると、政府は、NSCを早急に再建することを希望している。政策には兼価な輸入関税に関する高関税政策を含み、関税率を現行の3%から7%に引き上げることが検討されている。問題の核心は債権者と銀行間の調整にあり、特にホテック投資会社と債権者の和解が成立しない限り新規の投資家は現れない。債権者の銀行が債権放棄をすれば新規の投資が見こまれ、長期間の法廷闘争が回避されれば、銀行と新規の投資家との取引が将来可能になると説明した。

NSCは、ジャシィト家によって設立され、イリガン・インテグレイテッド・スチールミル社という社名だった。しかし、マルコス政権時代に戒厳令により設備を押収された。1995年、NSCはラモス政権により民営化された。現在香港に本社を置くホテック投資会社が82.5%の株式を保有し、政府は開発公社を通じて12.5%を保有し、残りは日本の丸紅が保有している。

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