ニューヨーク市公共旅客輸送機関スト回避

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年3月

ニューヨーク市公共旅客輸送機関で働く労働者は1999年12月15日、同市公共旅客輸送機関当局との和解に応じ、もし決行されたならば人口700万人の同市のクリスマス商戦や通勤などに大きな支障が出たであろうストは回避された。

同市公共旅客輸送機関の最近のストとしては1980年4月に11日続いたストがあるが、今回のストが決行された場合には、人々が地下鉄を使うことができず、寒い冬の市内を歩く必要があるなど一層大きな影響が予想された。同市のジュリアーニ市長は組合に対し強硬な態度でのぞみ、市側の主張を貫くため裁判所に提訴した。ニューヨーク州のマイケル・ペス(Pesce)最高裁判事は仮のスト禁止命令を出した。この命令によると、ストライキ行為を行った場合、各労働者への罰金は1日目に2万5000ドル(1ドル=109.5円)で、その後の罰金は毎日倍増する。同様に、組合自体のスト行為に対する罰金は、1日目に100万ドル、その後の罰金は毎日倍増する。上記の罰金に加え、マイケル・ペス州最高裁判事は、公共部門の労働者のストライキや怠業(slowdowns)を禁じた同州のテイラー法の適用を命じ、ストライキをする各労働者に対し、スト1日ごとに2日分の給料を減額するとした。さらに同判事は、組合役員に対し、組合員の職場やインターネット・サイトに、裁判所のスト禁止命令に関する告示を貼るよう命じた。州が課す上記の罰金に加え、ニューヨーク市から別の罰金を課される可能性もあった。

スト禁止命令を受けて、3万3000人の組合員を持つ全米運輸労組(United Transport Workers Union)ローカル100の指導者は12月14日、組合員にスト行為を行わないよう要請した。労使交渉は、組合内の派閥争いもあって複雑なものになっていた。ニュー・ディレクションズという派閥が、労使交渉に対して戦闘的な立場を取り、ストライキ決行を主張していた。ジュリアーニ市長は、ストライキをするという威嚇は組合内の権力抗争と深く関連しており、制御の効かない反対派が、組合指導者に圧力をかけているのだと指摘している。同労組は、全国の鉄道、航空、公共旅客輸送機関に10万7000人の組合員を持つ。

組合は向こう3年間、毎年9%の賃上げを要求していた。これに対し大都市公共旅客輸送機関当局は4年に9.25%の賃上げを提示していたため、両者の間には大きな隔たりがあった。なお12月15日の和解の条件は12月15日現在、公表されていない。同労組には運転手、整備要員、車掌がおり、同労組によれば、バスや地下鉄で働く労働者の年収は3万ドルから4万5000ドルとなっている。

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