CPF使用者掛金率、2ポイント上げ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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リー・シェンロン副首相は1999年11月23日、「経済回復へ向けて」と題する国会での声明で、経済の好転に伴い労働市場が逼迫しつつあるため、中央積立基金(CPF)の使用者掛金率を2000年4月から2ポイント引き上げ、12%にすると表明した。

リー副首相は声明でまず、アジア経済危機に対処するため1年前に打ち出した、賃金・CPF掛金率の引き下げを柱とする105億Sドル(1Sドル=62.42円)規模の経済対策により、企業は困難な時期を乗り切ることができたと同対策が果たした役割を確認。シンガポール経済は予想していたよりも急速に好転しているとの認識を示し、1999年の成長率は5%、2000年は同4.5~6.5%になると予測した。

リー副首相は、今後の課題を「完全な回復を促がし、副作用を引き起こすことなく経済を健康体に戻すこと」とし、とくに製造業の動向を注意深く見守っていく考えを示した。ディスクドライブや精油など一部製造業は、今も深刻なコスト圧力に直面しており、リストラとそれに伴う解雇が続いているためだ。こうした動向を踏まえて政府は、これまで進めてきたコスト削減策を今後も基本的に継続していく方針を固めた。

その一方で、リー副首相は、労働市場が逼迫しつつあり、このまま放置すればCPFの使用者掛金率の引き下げ相当分が賃金に上乗せされ、近い将来掛金率を元の水準に復旧するのが困難になると指摘。そのため政府は、コスト削減策の一環として1998年1月に20%から10%に引き下げた使用者掛金率を、当初予定していた2001年まで待たずに、2000年4月に2ポイント引き上げることを決定した。

リー副首相によれば、政府はCPFの理想的な掛金率を引き下げ前の率=「労働者20%+使用者20%」に設定しており、経済状態が許せば5年以内に完全復旧させたい意向だ。その場合、掛金が配分される三つの資金口座のうち、主として老後の資金積立にあてられる特別口座を優先し、今回の2ポイント引き上げ分も同口座に配分される。

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