炭鉱業で労使紛争の可能性

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

BHP社の新たな方針

近年の鉄や石炭市場における需給のアンバランスが、買い手側に有利に働き、これらの価格は10~20%低下している。価格の低下は、炭鉱業界にさらなる効率化を迫り、それを阻む1つの要因である労組を排除する方向に傾いている。例えば、Rio Tinto社は、職場から労組の影響力を排除し、労働者を個別雇用契約に移行させようとしたため、この方針をめぐりしばしば労使が激しく対立してきた。これに対し、Rio Tinto社のライバル企業である BHP社は、労組に好意的な戦略を採っているとみなされてきた。しかしながら、BHP社は、ある会議において労組に対し厳しい方針をとることを明らかにした。

実際、BHP社は、1999年11月に労組との協調関係を捨て、西オーストラリア州の約1000名の労働者に対し個別雇用契約に移行するよう申し出た。おそらく同社は、他の地域で働く労働者にも同様の提案を行うものと予想されている。

政府は、この方針を賞賛し、労働者に労組加入・非加入の選択権を与えるものと評価した。ただその選択権をよく見ると、BHP社の申出の通り個別雇用契約に移行すれば6%の賃上げと退職年金等の改善が認められる一方、アワードに残れば労働条件の改善はないという内容なのである。

以上の BHP社の方針転換が、炭鉱業での労使紛争発生の原因となり得ると指摘されている。

労組の反応

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、個別雇用契約で働く者とアワードに残る者との労働条件格差を問題視し、警戒心を持ってこの問題の推移を注視している。BHP社は、個別雇用契約の導入により、労組間の縄張り争いや労組内の対立に対処できると語っている。

ACTUは、この方針に抵抗する労組や労組員をあくまでも支持すると表明し、少なくともこの時点でBHP社と労組との協調関係は終焉を迎えたように思われる。同社は、Rio Tinto社と同様の戦略を実施すると思われ、石炭産業での労使紛争の可能性が高まっている。

Rio Tinto 社、結社の自由規定違反で有罪に

他方、Rio Tinto社は、職場関係法の結社の自由規定(注1)違反で有罪の判決を受けた。この規定は、労働者に組合の加入・非加入の自由を与えるものであるが、立法者の意図は組合非加入を容易にする点にあった。しかし、この規定が、組合に加入する労働者の権利をかえって強化するという思いがけない結果をもたらしている。

事件の概要であるが、ハンターバレー第1鉱山の組合代表3名が、組合活動を理由とした休暇取得を拒否されたが、組合活動のために勤務しなかったところ欠勤扱いとされ、果ては解雇すると脅されたというものである。連邦裁判所は、結社の自由規定違反を認め、会社側は上訴しなかった。

労組は、今回の判決を結社の自由規定に関する重要な先例となるとして歓迎している。

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