ハンガリー/サービス部門の発展の遅れ:低賃金

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

最近の労働市場調査によれば、サービスセクター(いわゆる「第3セクター」)に従事する労働者数は、先進資本主義国に比べると少ない。(1)この10年、「第3セクター」に従事する労働者数は増加を続けており、1990年代には210万人に達し、労働力のほぼ3分の2がサービスセクターに従事するようになった。しかし、国内需要(もしくはハンガリー国民の購買力)が限界にきていることがネックになり、発展の歩みが止まっている。

ハンガリー経済各部門への労働力分布は、次のようになっている。まず、農業に従事する労働者数は1993年以降10%を下回っており、この割合は年々減少し続け、現在総労働人口(369万人)のうちわずか7.5%にすぎない。次に、工業に従事する労働者の割合は、対外直接投資のおかげでわずかながら増加しており、その数は126万人と、総労働人口の34%を占める。最後に、冒頭に述べた通りサービスセクターの労働人口は210万人で、総労働人口に占める割合は58%を超える。サービスセクターの中でも労働者の従事数が一番多いのは、国家予算が充てられている健康・教育・行政などの分野である。これに関して特記すべきは、サービスセクターの中のこういったサブセクターにおいて、注目すべき新たな傾向が見られるということだ。具体的には、公的資金の不足から、民間資金の役割の重要性が高まっているのである。教育・健康セクターにおいてもその傾向が見られる。したがって、教育・健康セクターを公的部門と同等であるとみなしたり、産業別の労働者割合の変化(第1、第2セクターから第3セクターにシフトしていること)が、社会主義体制下の政治・経済制度が崩壊した結果であると単純に結論づけることは、短絡的であると言える。今日のハンガリーにおいては、こういった教育・健康セクターをはじめとして公的部門をも含めたサブセクターが、多様な資本形成により成り立っている。高等教育などにおいては、公的資金の割合が民間資金の割合よりも低いことがめずらしくない。

昨年、「第3セクター」においてめざましい発展が見られたのは、以下の活動である。

  • ホテルサービス及びケータリング
  • リース業及び不動産業に関連する活動

最後に述べておかなければならないのは、ハンガリーでは低賃金が「第3セクター」への労働力の参入を制限し、この部門における更なる雇用創出の妨げになっていることである。また、観光業・金融業などの分野に対するハンガリー国内の需要は、西ヨーロッパ諸国に比べるとかなり低い。統計によれば、ハンガリーにおける1人当り GDP 額は、EU諸国平均の50%より低い。さらに、賃金はEU諸国平均の30%より低い。最新の試算結果では、サービスセクターにおいて大幅な雇用の増加を実現するためには、年4~5%の実質賃金アップが必要であるとされている。

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