ハンガリー/対外直接投資及び資本の輸出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

中央ヨーロッパ・東ヨーロッパ諸国の中で、ポーランドは、国内総生産(GDP)の年成長率が1993年以降平均して5.5%であり、対外投資国の「信用度リスト」で8位のランク付けである。この「信用度リスト」において、チェコは16位、ハンガリーは18位である。

(1)対外投資を行う国々の中で、ハンガリーへの投資が最も盛んなのはアメリカである。一方、チェコで優位を占めるのはフランス及びドイツである。中央ヨーロッパ・東ヨーロッパ諸国における対外直接投資に関する最新調査によれば、ハンガリーにとって特に有利な点は、非金融サービス部門が発達していることである。ハンガリーが対外投資をひきつける要因には、以下のものがあげられる。

  • 十分に訓練を受けた人的資源
  • 安い労働力
  • 労働生産性の高さ
  • 比較的進んだ基盤整備

ハンガリーの投資環境におけるプラス要因及びマイナス要因は以下の通りである。

プラス要因:

  • 対外投資に与えられる金融・関税上の多様な優遇措置
  • 企業体質の改善
  • 経済再編プロセスの終了

マイナス要因:

ハンガリー政府は、国内大手27社(MOL Co.等)の「ゴールド・ストック」と呼ばれる株を所有している。「ゴールド・ストック」を所有することにより、政府は生産、合併、転換、株式の売却などにおける抜本的な変革を抑制もしくは阻止することができる仕組みになっている。

日本からのハンガリーへの投資は急速に増加しつつあり、その規模は1999年末に10億 US ドルに達する見込みである。この日本のハンガリーへの投資規模は、オーストリアや他の中央ヨーロッパ・東ヨーロッパ諸国に対する投資規模よりも大きい。最新のニュースによれば、小型バッテリーの製造で業界をリードする三洋電機が、Dorog(ドログ)市(首都ブダペスト近隣の都市)に新しい工場を建設する予定である。三洋電機は、ドログ市の工業団地に対し、今後5年間に9000万エキュー(欧州通貨単位)を投資する予定である。この「グリーンフィールド」投資は14ヘクタールの規模を必要とし、バッテリー製造工場の敷地面積に1万4000平米があてられている。三洋電機は、ハンガリーにおける会社名をSanyo Energy(Hungary Co.)とし、2000年4月からバッテリーの販売を開始、2001年からは生産を開始する予定である。

ハンガリーの資本輸出は、どのような可能性を持っているであろうか。中央ヨーロッパ・東ヨーロッパ諸国は、社会主義国家の政治・経済体制が崩壊してからというもの、新たに市場経済を近代化するための財源(資本)の慢性的な不足に悩まされ続けている。他の中央ヨーロッパ・東ヨーロッパの旧社会主義国と同様、ハンガリー経済は常に外国による投資を必要としているが、その一方でハンガリー資本は、近隣諸国に積極的に輸出されている。最新の統計によれば、近隣4カ国(スロバキア、クロアチア、ルーマニア及びウクライナ)に対し、ハンガリーから1億9000万 US ドルを超える資本が輸出されている。

ハンガリー資本の大部分はルーマニアをターゲットにしており、ルーマニアへの対外直接投資(HFDI)の50%が、トランシルバニア地方(第一次世界大戦までハンガリー領であった)に向けられている。残り50%は首都ブカレストに投資されている。HFDI はジョイント・ベンチャーの形態をとっており、そのことによりハンガリー資本とルーマニア資本が結びついている。ジョイント・ベンチャーは、他の国々においても見られる特徴である。ルーマニアへの対外直接投資全体の中で、ハンガリーからの投資規模は13位に位置する。ウクライナへの対外直接投資でもハンガリーは同じような順位である。ウクライナに向けられた対外直接投資総額28億 US ドルのうち、4700万 US ドルがハンガリーから輸出された資本であり、14位に位置するのである。ハンガリーからウクライナへの投資は、1999年末までの間に、更に相当規模行われる見込みである。ウクライナ政府は、対外直接投資の今後を見込んで積極的且つ魅力的な環境をつくりだそうと懸命である。例えば、ウクライナは対外投資に対し、租税及び関税に関してかなりの優遇措置をとっており、17の特別経済地域のいずれかへの投資である場合は、特に優遇の度合を高く設定している。

ハンガリー企業は、ウクライナにビジネスの好機を見出している。ウクライナにおける対外投資に関する税法では、ウクライナ側が20%出資する形のジョイント・ベンチャーが、投資の形態の中で最も優遇される。対外投資を行うに当たって特に問題となるのは、いかにして「信頼できるビジネス・パートナー」を見つけるかということである。ウクライナではルーマニアと同様、ハンガリー企業の中でMOL Co.、Dunapack及びPannonplast Co.が最大規模の投資を行っている。経済省によれば、ウクライナを経由した方がロシア市場への参入が容易になるとのことだ。例えば、ハンガリーのメーカーがウクライナで製品の製造を行った場合、その製品は自動的に「ウクライナ製品」とみなされ、ロシアにおいて、ハンガリーから直接輸出された製品よりもかなりの優遇を受けることができるのである。

スロバキアに14のガソリンスタンドを持つ石油・ガス会社の MOL Co. は、スロバキアに対外投資を行う有力な企業のひとつである。スロバキアに対するハンガリーの生産資本輸出総額3500万 US ドルのうち、MOL Co. の輸出額は最も高い割合を占める。スロバキアに対外投資を行う国々の中でハンガリーが14位につけているのは、この MOL Co. の投資額に拠るところが大きい。ハンガリーの直接投資をスロバキア国内各地域への配分という観点から見ると、首都ブラチスラバに特に集中していることがわかる。スロバキアにおいても、ジョイント・ベンチャーの形態が法によって優遇されている。Hungarian Trade Serviceによれば、650社のうち、ハンガリー資本が100%の会社はわずか15社にすぎない。

クロアチアでは、ハンガリー資本の対外直接投資に関する系統的な統計はとられていないが、Hungarian Trade Serviceザグレブ支部の情報によれば、直接投資の総額は2200万 US ドルに相当する。数百社がハンガリーからの資本投資を受けているが、その多くがハンガリー企業最大手2~3社による投資である。以下に、ハンガリーから近隣諸国への直接投資の一覧を掲げる。

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