雇用審判所への申し立て件数、30%増加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

助言斡旋仲裁局(ACAS)が1999年10月に公表した統計によると、労働者が使用者を法的に訴える件数が過去15カ月間に30%増加している。1999年7月までの1年間では、雇用審判所への申立書の提出は13万6000件にのぼっており、その大部分は不公正解雇に関するものだ。

雇用審判所への申し立て件数が増えている要因について、雇用法専門の法律事務所ディブ・ルプトン・アルソープのポール・ニコラス氏は、(1)組合が、集団的労働関係のみを支援してきた従来の立場を離れ、現在では加入者個人の権利を保護することに努力を傾けるようになったこと、(2)使用者が組合を承認しているか否かに関わりなく、申立人は雇用審判所において組合によって代表される資格を有するようになったこと、を挙げている。

運輸一般労組(TGWU)によれば、加入者が不公正解雇訴訟で1999年に補償を勝ち取った件数は前年をかなり上回っており、TGWUはこうした動向を歓迎している。使用者は、不公正解雇の訴えを回避するために、当該労働者が不公正解雇の申立資格要件を満たす前に解雇するケースが少なくないが(注1)、労働者が不公正解雇訴訟で勝訴し補償を獲得する件数が増えている背景には、使用者のこうしたやり方に雇用審判所が批判的になってきていることがある。

ニコラス氏は、不公正解雇に係る補償金の上限額が1999年11月より1万6600ポンド(1ポンド=164.7円)から5万6600ポンドへ引き上げられることにより、申し立て件数は今後さらに増大すると見ている。より高い賃金を得ている労働者や中間管理職らが申し立てに踏み切るケースが増えるためだ。

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