ブラウン蔵相、使用者に賃上げの抑制を迫る

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

ブラウン蔵相は、1999年10月13日、賃金の急騰により金利引き上げ圧力がさらに高まるのを懸念し、賃金の引き上げに歯止めをかけるよう使用者らに呼びかけた。

国家統計局によれば、3カ月間の平均実収賃金の上昇率は、1999年5~7月の4.6%から6~8月の4.9%へ急騰した。輸送・通信部門での高額ボーナスと深刻な技能労働者不足によるところが大きい。ホテル、レストラン、レジャーの各産業も新規採用が困難になっている。ブラウン蔵相は4.9%という賃上げ率からイングランド銀行がさらなる利上げに踏み切るのを警戒し、使用者に賃金抑制を呼びかけた。イングランド銀行は、9月に金利を0.25ポイント引き上げて5.25%とした際、労働市場が逼迫していることを引き合いに出している。同行は、長期的な適正インフレ率に見あう賃上げ率を4.5%としているが、現在はそれをかなり上回っている。

一方、失業水準は過去19年間で最低水準。1999年8月に121万5000人いた求職手当申請者数は9月に120万9000人に減少し、1980年4月以来最低の水準を記録した。1980年から現在までの平均失業者数300万人と比較すると、いかに低水準であるかがわかる。多くのアナリストは最近の景気減速により失業者は増加すると予測していただけに、やや当惑気味だ。

英国産業連盟(CBI)は、今回のブラウン蔵相の呼びかけに対し、政府の公式統計は各種調査結果と一致しておらず、また中央銀行は政府統計から速断して金融引き締めを強めるべきでないと反発している。CBIのケイト・ベーカー経済顧問によれば、労働市場は逼迫しているが、全体としてみれば、企業は技能労働者不足に直面してはいないとし、今回のデーターの信憑性を疑問視している。

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