海員の失業者1万人

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年1月

約1万人の海員が過去2年間で失業した。この原因は、世界的に海事産業が人員規模を縮小し、より低い賃金で働く他国の海員を雇用し始めたからである。

キリスト教会が支援する「海の使徒」の指導者ワルシュは、フィリピン海員雇用協会(PAME)に加入している6000人のフィリピン人が1998年から現在までに解雇され、PAMEへの非加入者も含めば、解雇された海員は1万人に達すると述べている。

フィリピンは世界の海員120万人の30%を占める最も多くの海員を供給している。PAMEは、船舶業界の50の雇用斡旋業者で構成されている。

ワルシュは、フィリピン人海員が受け取っている月額250ドル(1ドル=102円)の賃金より25~30%の低賃金で厭わず働く中国人や東欧人に、フィリピン人は職を奪われ、1997年から始まったアジア経済危機の後、韓国人も一般のフィリピン人乗組員の賃金の半額で厭わず働くようになったと発表した。

また、PAMEは、少なくとも12の外国籍の船がフィリピン人乗組員を解雇し、より低い賃金を受け入れたウクライナ人やポーランド人を採用したことを公表した。

ワルシュによれば、フィリピン人は英語を話せ、「勇気」と船の機械設備の操作と修理能力により有名だったが、低賃金を受け入れた他国の海員はフィリピン人の優秀な点をも浸食している。加えて、多くの船舶の技術革新が進み必要な乗組員が少なくてすみ、たった12人の乗組員で運行されるコンピューター化された大型タンカーや輸送船もある。また、海員の訓練は、彼らに普段就いている任務より高い地位の資格を与えるほど十分ではない。

ワルシュは、解雇された海員を吸収するほど十分な船舶がフィリピンにないため、政府に雇用問題の衝撃を与えていると述べた。デノポル海事産業局地方事務所長は、斡旋業者はワルシュの懸念を理解しており、海員に代わる仕事を探している過程にあると反論し、解雇された海員は港湾で船舶関係の仕事が出来、更に、漁業で働くことも出来ると述べたが、就職できる船舶関係の職は、解雇された海員を全て受け入れるほど十分ではないことも認めた。

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